ストレスライン

 “ストレスライン(stress line)”は、もう日本語に成っていると言っても構わないくらい、有名な羽毛異常を表す用語です。ストレスラインは、成長中の羽軸根への“様々な障害の結果”、羽板を横切る様に現れる線(ライン)です。線ではなく、帯(bar)とする記載されることもあります。イヌの股関節の評価の際に使う“ストレスライン”は、別の用語です。
 この用語には異表記があって、stress mark、stress bar、fault line、fret lineとも記載されます。

 臨床上、こうした所見は、換羽時にあった疾病の存在や栄養欠乏症、外傷あるいはなんらかの出来事によって、患鳥がストレスを受けた事を示唆している・・・といった捉え方をします。

2017-09-16 16.02.592017-09-16 16.03.10
 一般に理解されている“ストレスライン”は、羽毛の伸長が盛んな時期の雛鳥が飢餓状態を体験した結果、羽毛に栄養不良の履歴が現れる/脂肪分の多い飼料を与えられている事による栄養の不均衡の結果・・・といった捉えられ方をされているように思われます。
 しかし、実際のストレスラインは、成長中の羽軸根への様々な障害の結果生じるのであって、その原因は様々です。

 テキスト上紹介されているいくつかを、例に挙げます。
ある種のストレス(例、給餌計画の混乱)の期間中にあるコルチコステロイドホルモンの放出に関連した、短期間の羽軸根にある上皮組織の機能不全の結果である(1)。
→こうした知見が、“飢餓の結果/栄養不良”という風聞に結びついたのだろう。
トリアムシノロン(ステロイドホルモン)を含んだハンドクリームの使用によって、ストレスラインが生じた;ハト(2)。
PBFD、つまりインコ・オウム類におけるサーコウイルスの増殖の結果生じる羽毛の形成異常。
羽鞘が羽毛を締め付けているところにストレスラインが生じることが多い;イエスズメ(3)。
→羽づくろいの不足。
→新生仔の正常羽毛の発育初期に、湿度は明らかに重要な役割を果たします。乾燥した環境で(例、白熱光で加熱された保育箱)多くなる新生仔羽毛の発育遅延や飛毛の鞘の残存は、湿度の増加に反応することが知られています(1)。

 たとえば、写真にある様なオオタカ(黄鷹)のストレスラインを評価する場合、血液検査やレントゲン撮影によって、現在の栄養上の問題や骨格の変形の有無について確認を行います(→ほとんどの場合、異常は見つからない)
 さらに、育成過程について確認を行うのですが、このトリはハンドレアード(人工育雛)で育てられており、自然界におけるペアレントレアードのトリ達にある様な栄養供給の瑕疵があったとは考えにくい個体であり、飼育下におけるペアレントレアードのトリ達に稀にある育雛放棄の事実も無い・・・という事になります。もちろん、ハンドレアードのトリであったとしても、雛鳥が一定期間食餌を受け付けなくなったという事があったかどうかについても、確認するのを忘れてはなりません。
 そして、駆虫薬・サプリメント等、何らかの投薬が行われていたのか、寄生虫感染の有無などについての確認も怠りません(→羽毛にストレスラインが現れたと考えられる時期や、それ以前に投薬が行われていたかどうか/寄生虫の感染があったかが重要)
 ここまで調べて問題が無かった時、考えられるのは、加温または本来の湿度による乾燥の影響によって、局所的に、あるいは生えてきたばかりの羽毛が乾燥してしまい、ある期間中に羽鞘の脱落が不十分になった結果としてストレスラインが生じたのではないのか・・・と推測し、こうした内容について、飼い主に説明を行います。
 鳥種によって、管理の状況によって、検査の内容は多岐に渡ります。

参考文献
1)鳥類の内科および外科臨床 41章外皮の異常, LLL.Seminar, 1997
2)Nico J. .Schoemaker, エキゾチックペットの皮膚科症例, VEC Vol.2 No.4, 2004
3)鳥類の人工孵化と育雛 35章 スズメ目:メキシコマシコ、ヒワ類、イエスズメ, 文永堂出版, 2008
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ま、いいじゃないか(^^;

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