問診の例(緊急性が高い場合)

 “突然元気の無くなったトリ”。つまり、急死しそうなトリが診察室に現れたとします。
 一般の飼い鳥、つまりインコ・オウム類と猛禽類では、同じ様で少し違う事を飼い主の方はたずねられるかもしれません。
 
 突然元気が無くなる原因は数多くありますが、“元気が無い”という症状だけでは、一目で確定診断が出来る典型的な症状という事はないし、その場で即診断(あるいは除外診断)出来る便利な検査というのも現れてまいりません。どうかすると、こうしたケースでは患者はすぐに死んでしまうので、生前に確定診断を得る事は不可能になります。

 この様な状態にある患者に遭遇した場合、獣医師は飼い主から得た情報のみを頼りに、急いで暫定的な診断を行い、治療を開始するという事をします。
 その時に聞かれる質問の内容は、例えば、以下の様な事柄についてかもしれません。

1. 煙等の吸入
いわゆる吸入毒に該当する各種製品、蚊取り線香などの使用。消毒薬の種類。
2. 重金属中毒
鉛や亜鉛の摂取につながる食餌等の摂食の有無。←採取した血液サンプルを、調べてくれる商業ベースの検査所が無い。
3. 有毒な食物などの摂取
食べたら死ぬ可能性のある動物、昆虫、植物、薬などの摂取歴。←猛禽類の場合、ハトの忌避剤を食べて死んだケースがある。
4. 農薬などへの暴露
屋外繋留の有無。フライトの実施場所。枯葉剤、殺虫剤の使用の有無。←有機リン中毒については、コリンエステラーゼの測定が役に立つと言われているが、鳥種ごとに、あるいは測定方法の違いによっても正常値が異なるので(例えば、ワシミミズクの数値があったとしても、ハリスホークには使用出来ない)、とても利用しづらい。
5. 異物の誤食
大緒、床に落ちているゴミ、石、ウッドチップ、靴下など、飼育環境から無くなったモノの有無。
6. 感染症
与えている食餌の変更、供給元の変更の有無。食餌の衛生状態。新規導入鳥の有無。最近、ヒト(あるいはトリ)がトリの大勢居る場所に出かけた事があるなしなどについて。 ←全ての病原体という事ではないが、商業ベースで利用可能な遺伝子検査がいくつかある。ただし、迅速に検査結果を得られるとは限らない。

 当然ですが、以前から問題のあったトリが臨床症状を顕在化させる事なく、飼い主目線で“突然具合が悪くなった”という場合があり得るので、飼い主からの聞き取りだけではなく、可能であれば血液検査やレントゲン、糞便検査は行うべきです。ただし、ここでいう“突然元気の無くなったトリ”というのは、かなり危険な状態を言っているので、検査に必要なストレスにトリが耐えられないかもしれません(利用出来るのは、飼い主の話のみ)
 見落としがちなのは、頭部外傷です。一見したところ外観正常なトリであったとしても、眼底検査を行うとペクテンから出血が見つかる事があります(一見したところ、“突然元気が無くなった”様に見える)。これは、小さな鳥かごの中で飼育していた小型フクロウ程度でも起きる事のある事故なので、可能な限り検査を行う様にしております。ただし、眼底検査はトリをタオル等で拘束して散瞳用の麻酔薬を使用して行うか、全身麻酔を行った上で検査するので、“急死しそうなトリ”に対しては実施不可能な検査になるかもしれません。

特記事項
飼い主の方は、来院時、上記の内容について聞かれる事があります。
卵づまりは、猛禽類では稀にしか遭遇しないトラブルなので、上記リストから外してあります。
緊急性が高すぎて検査が出来ない、利用可能な実用的な検査が無いなどの理由により、飼い主から聴取した病歴のみにより、暫定的な診断に基づいて治療を開始する事があります。
上記の内容とは、普段から健康管理上、気をつけておくと良い事柄でもあります。
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わたらい先生

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ま、いいじゃないか(^^;

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