“嗉嚢(そのう)の病気”

 おそらく全国的に、かつて一世を風靡した検査とその診断名に“嗉嚢(そのう)検査”と“嗉嚢(そのう)炎”というのがありました。嗉嚢(そのう)の検査自体は現在も行われておりますが、“嗉嚢(そのう)炎”という症状名あるいは疾病名については現在では使わなくなってきておりますので、その背景について説明いたします。

ラセン菌
(図1.嗉嚢(そのう)内容物中に見つかったラセン菌。Campylobacter spp.感染症を疑う症例)

 
 “嗉嚢(そのう)炎”とはつまり、嗉嚢(そのう)の炎症という意味になるのですが、実際に行われる嗉嚢(そのう)検査では、この構造に炎症が起きている証拠免疫系の細胞の反応を見つける事は、むしろ珍しい出来事なので、“嗉嚢(そのう)検査によって嗉嚢(そのう)炎が診断される”事はありません。別の検査方法、すなわち、嗉嚢(そのう)の一部を切除して行う病理組織検査(“嗉嚢(そのう)生検”)では、嗉嚢(そのう)の筋層間神経節におけるリンパ球および形質細胞の浸潤(神経炎像)というのを見つける事がありますが、この方法で診断出来るのは、嗉嚢(そのう)炎ではなくて前胃拡張症(PDD)という別の病名です。
 嗉嚢(そのう)検査によって発見出来るのは、嗉嚢(そのう)の内容物や剥離した上皮組織内の、細菌、真菌、原虫類Trichomonas spp.)です。“Canker”と呼ばれる、口腔内の潰瘍性病変が存在する場合(トリコモナス症など)では、それと分かる炎症細胞が見つかる事がありますが、この異常は既に肉眼で確認出来てしまっているのが普通であり、嗉嚢(そのう)検査ではない別の方法で十分に診断出来ます。
 現在では、情報の整理が進み、より状態に即している、正確で整った情報の提示が出来る病名や症状名に比較的短時間で容易に辿り着ける様に成ったので(嗉嚢(そのう)うっ滞、酸敗嗉嚢(そのう)、嗉嚢(そのう)熱傷、嗉嚢(そのう)裂傷、(嗉嚢(そのう)あるいは前胃での)閉塞症、カンジダ症、トリコモナス症、ヘキサミタ症、コクロソマ症、マクロラブダス症、前胃拡張症(PDD)、重金属中毒、低カルシウム血症など)以前の様に症状名としても診断名としても不十分な“嗉嚢(そのう)炎”を用いる事は無くなりました

ハリスホーク酸敗嗉嚢(そのう)
(図2.猛禽類の酸敗嗉嚢(そのう)の直接鏡顕像。この疾病は、食後6時間程度から患者に異常が現れる事のある、急性で重篤な敗血症を主徴としている。この疾病で“炎症細胞”が見つかる様に成るほどの長時間は、この患者は生存していないものと考えられる)

特記事項
嗉嚢(そのう)炎は、今では使わなくなった症状名ないし病名です。
“嗉嚢(そのう)の病気”には、色々な診断名があります
嗉嚢(そのう)の病気の診断には、むしろ嗉嚢(そのう)検査以外の検査が必要です。
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わたらい先生

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ま、いいじゃないか(^^;

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