多発性骨化過剰症

 繁殖期の雌鳥に見つかる生理的な変化に、骨髄骨があります。この骨組織は、卵殻形成時のカルシウム調整に関わる事が古くから知られています。この変化は、主に大腿骨と脛足根骨に現れます。
 一方で、産卵をしていない雌や、雄のセキセイインコにも、多くは上腕骨や大腿骨に、生理的な骨髄の骨化に似た現象が生じます。これを多発性骨化過剰症と呼びます。この名称は、正しくは病名ではなく症状名になります。

セキセイインコ雄多発性骨化過剰症
(図1.雄のセキセイインコの精巣腫瘍で見つかった多発性骨化過剰症。精巣腫瘍では、腫瘍の成長に連れてアンドロゲンの産生が減少するので、エストロゲンが優位になる。患者のろう膜には雌性化の徴候が認められ、レントゲン撮影を行うと、本来なら雌鳥にしか見つからないはずの骨髄骨が認められる様に成る)

 
 この異常の見つかる患者達は、無関心協調不能多飲多尿腹部膨満脱力不全麻痺片足あるいは両足の麻痺を示す事があります。この現象は、一般には、卵巣腫瘍ないし精巣腫瘍に関連している、(生殖腺の腫瘍によってしばしば産生される)血中エストロゲン濃度の上昇によって誘発される、正常な生理現象の病的悪化によると考えられております(図1)(1)。

 多発性骨化過剰症が観察されるのは、腫瘍による症例だけではありません。正常な卵巣を有しており、ホルモン分泌性の腫瘍の証拠を何ら見つける事の出来ないトリであっても、臨床上の異常があり、多発性骨化過剰症が見つかる雌鳥達というのがおります。
 エストロゲンは肝臓で代謝を受けてから胆汁に排泄されるので、肝臓が正常に機能していなければ血中から除去されにくくなるホルモンです。肝臓への過負荷や肝臓障害があるとエストロゲン分解能が低下するので、慢性的なエストロゲン濃度の上昇が起きる様に成り、ホルモン分泌性の腫瘍が存在する時とよく似た変化が体に現れる様になります(1)。

 肝臓への過負荷や肝臓障害が生じるパターンには、いくつかあります。よくある脂肪肝は脂質代謝に関連した話題になるので、より正確には、脂質異常症(いわゆる“高脂血症”)のパターンにはいくつかがあるという事になります。
 よくあるのは、ヒマワリの種子やピーナッツ、キビ・アワ・ヒエなどの高脂肪食によって生じる肥満と脂肪肝に関連している場合です。この状態は、“肝臓への過量な脂質の供給があると、全ての脂質を肝臓で処理して他の組織に輸送する事が出来なくなるので、余剰の脂質が肝細胞内に蓄積するようになる”と言い換える事が出来ます。このケースは、“欲求不満な雌鳥(frustrated female breeder)”で多く遭遇します(1,2)。
 体内にあるLDLコレステロール(いわゆる“悪玉コレステロール”)を体外に廃棄する事の出来なくなった、つまり、卵を産めなくなった卵管蓄卵材症の患者でも、多発性骨化過剰症は発生します。この患者達は腹囲が膨満しているので一見太っている様に見えるのですが、実際には痩せている事が多いトリ達です。この場合は、“肝臓で代謝されて出来るLDLコレステロールが体外に排出されないでいると、その前駆体にあたるVLDLの肝臓での形成や分泌が低下する様に成るので、肝細胞に脂肪が蓄積するようになる”と言い換える事が出来ます(図2,図3)。

オカメインコ多発性骨化過剰症
(図2.オカメインコの卵管蓄卵材症。この多発性骨過剰症は、本来のエストロゲンの分泌に加えて脂肪肝の影響によって生じていると考えられる)


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(図3.LipoTESTによるウズラの脂質プロファイル。産卵を行ってないウズラ(右)に対して、産卵を行っているウズラ(左)では、コレステロールも中性脂肪もLDLのピークが現れないほど低値である)

特記事項
レントゲン撮影によって多発性骨化過剰症が観察される患者には、精密な検査が必要です。
腫瘍性のホルモン異常でない症例では、その患者を治せる事があります。
定期的な検査は、内分泌の問題を早期に発見する事があります。
脂質異常症の周辺には水面下に潜む数多くの疾病が存在するので、早期の診断には重要な意義があります。

参考文献
1) Petra Zsivanovits, Neil Forbes, Calcium metabolism in psittacine birds, http://www.gwexotics.com/
2) Neil A Forbes, Heart disease, atherosclerosis and sex, in parrots, Parrots・www.parrotmag.com, February 2014

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ま、いいじゃないか(^^;

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