頭部外傷

 分かり易い頭部外傷とは、飼い主の眼前で使役していた鷹が建物などに衝突したという稟告(りんこく)が聴取された時を言うのですが、非常に残念な事に、その様なトリ達は例外無く即死してもおかしくない速度で衝突してしまっているので、診療の対象となる事は稀です。

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(図1.ガードレールとの接触事故により目の周囲が腫脹したオオタカ(左、中央)。この目の腫れは、治療により翌日には消失した(右)。事故直後は意識が無く、その後蘇生した珍しい症例である)

 
 治療の対象となる事が最も多い頭部外傷の患者とは、小型のフクロウ類の事を言います。
 こうした事故(頭部外傷)は、短い大緒で繋がれていた繋留飼育の小型のフクロウや、(セキセイインコが飼育されている様な)小さな鳥かごの中で飼われていた小型のフクロウで“いつの間にか”発生します。

 一般に、“頭部外傷のトリ”とは、スピードのある状態のトリ達がナニカに衝突した結果であるという先入観があるので、この様なトリ達は“小型のフクロウ類で見つかる原因不明の神経疾患”という言い方もされておりました。
 あまりにも狭い空間と運動量で生じる事故であった事と、鳥類の目の異常は外観からは全く気付かれない事が理由となって起きていた、よくあった誤診の一つです

 患者は、“意識がハッキリしている”様に見え、足が上手く使えなくて翼で立ち上がろうとするので、“(脳以外の)何かの神経系の疾患”であるかの様に見えます。
 鳥類の目には、哺乳類と異なり、間接対光反射が無い(正常でも瞳孔不同がある)、片目でもよくモノが見える、後眼部で出血があっても外観上ソレと分かる症状が見つからないなどの特徴があります。こうした性質は、小型のフクロウ類を、外貌からは頭部に衝撃を受けている様に見えないトリ達にしてしまうので、経験と知識のある獣医師でなければ、この問題には正しいアプローチが行えないかもしれません。

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(図2.“起立不能”の小型のフクロウ類。こうしたトリ達の何割かに、頭部外傷の痕跡が見つかる事がある)


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(図3.図2の中央の症例の眼底写真。鳥類の後眼部の異常は、外観の観察では全く発見する事が出来ない。左;右眼の眼底像。正常な網膜とペクテン。右;左眼の眼底像。ペクテンの損傷と網膜の変性は眼内で激しい炎症があった痕跡であり、左目を中心に頭部に中等度以上の強力なエネルギーが加わった証拠でもある。この写真は“事故後”1年以上が経過してから撮影されているので、新鮮な出血の所見等は得られていない)

特記事項
起立不能の患者には類症鑑別があります。よく似た症状を呈する他の病気の診断が為される場合も多いので、全身の身体検査はもとより、血液検査やレントゲン撮影も同時に実施した上で眼科検査を行っております。
いつの間にか”そう成っていたフクロウ類のトラブルにはバリエーションがあり、頭部外傷だけでなく、脚部の骨折や翼の関節の脱臼などが見つかる事もあります。この様な事故は、飼い主の見ていない夜間に発生します。
一見“何ともなさそうな”フクロウ達のトラブルです。小型のフクロウ類で多く遭遇し、メンフクロウが来院した事もあります。
可能であれば、負傷後6時間以内に治療を開始できれば、被害を最小化できるかもしれません。


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ま、いいじゃないか(^^;

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