目の異常

 猛禽類で遭遇する眼の異常は、外傷によるものが最多です(1,2)。眼球は、大きく前眼部と後眼部に分ける事が出来ますが、ヒトが肉眼で観察出来るのは前眼部のみであり、後眼部の異常を見つけるには専用の検査機器が必要です(眼底検査、眼圧検査など)

塗料
(図1.このハリスホークは、衝突によって角膜表面に塗料が付着している)

 
レンズの内方脱臼
(図2.チョウゲンボウの左眼に見つかった水晶体の内方脱臼)


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(図3.このツミの右眼には過去にあった外傷の痕跡が認められる。瞳孔の変形は虹彩後癒着により水晶体と瞳孔が癒着したためである。水晶体の一部の変性と前眼房内の異物にも注目)

 野鳥で遭遇する目の異常は、ほぼ外傷によると考えて問題ありませんが、飼い鳥では、その発生原因は多岐に渡るので、目の検査だけでなく血液検査やレントゲン撮影なども必要な場合があります。
 ごく早期の異常の発見と動物病院の受診は、トリ達の目だけでなく命を守る事があります。

ケアシノスリ
(図4.ケアシノスリの右眼の白内障。鳥類の白内障は先天性と続発性に分けられる。続発性の白内障には、栄養欠乏性-、外傷性-、加齢性白内障、網膜変性症に続発する白内障があります(3))

 緑内障は、目の打撲等によって発生したぶどう膜炎に続発します。この異常は鳥類の眼球構造が理由になって、緑内障が進行した牛眼と呼ばれる状態に成っていたとしても(ヒトやイヌでは、その外観は“牛の目”の様に突出して非常によく目立つ)、あまり目立ちません。この眼球は失明している事も多いのですが、鳥類は片目でもヒトほど障害が現れない生物なので、なんら以上無く生活している事があります。

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(図5.左;左眼に緑内障のあるオオコノハズク。右;緑内障が進行し右眼が牛眼となったオオタカ。既に眼球癆が始まっている)

 後眼部に異常のあるトリ達は、外観(前眼部)が正常が見えている事がよくあります。後眼部の異常のあるトリ達は、全ての眼疾患のトリ達の中で22%を占めており、その内の84%の患者は、眼底検査でのみ異常を知る事が出来た患者でした(2)。

20071207エゾフクロウ
(図6.目に“症状”のあるフクロウ類。前眼部の検査のみ行った場合、左のオオコノハズクは“異常が無い”事になってしまう)


眼内出血の痕
(図7.図6と同一のエゾフクロウ。左眼の前眼部には、出血が収まった後のフィブリン塊が観察される)

 眼底検査は、セキセイインコまでのあらゆる大きさの鳥種で実施可能ですが、焦点距離の問題から、眼底カメラで撮影した写真を飼い主に提示出来るのは、フクロウの様に大きな眼球をしたトリ達に限られます。

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(図8.哺乳類(左)と鳥類(右)の眼底写真。左;ネコの眼底である。視神経乳頭から血管が発達しているのが見える。タペタムがあるので眼底は“明るい”。右;ベンガルワシミミズクの眼底である。鳥類の眼底には血管が存在せず、代わりにペクテンが発達している。タペタムが無いので、鳥類の眼底は“暗い”)


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(図9.異常な眼底の例。回復しない神経症状のあるスピックスコノハズクの眼底を観察すると、ペクテンと網膜の変性が明らかであった。このトリは、当時は一見したところ正常に見えていた、目や頭部を損傷した頭部外傷の患者であった事が、眼科検査から突き止められた)

特記事項
猛禽類同士のケンカがあった場合、爪が人知れず目に入っている事があります。
“目をつぶっている”、“目をぶつけた”トリ達は、一見外観が正常に見えていたとしても、必ず眼底検査の実施できる動物病院を受診するべきです。
例えば、眼球のはまっている骨を損傷すると、そのトリは耳から出血している事があります。目の異常は、目だけでなく、周辺の組織を大きく巻き込んだ異常の徴候の一つにすぎないかもしれないので、眼科以外の検査を同時に実施する事があります

参考文献
1) R. T. Korbel, AVIAN OPHTHALMOLOGY PRINCIPLES AND APPLICATION, Veterinary Conference, Doha January 2014
2) R. T. Korbel., Disorders of the posterior eye segment in raptors – examination procedures and findings. Raptor Biomedicine Ⅲ. Lake Worth/FL: Zool Education Network, p179 – 194., 2000
3) A. Bayón, RM. Almela, J. Talavera, Avian ophthalmology, EJCAP - Vol. 17 - Issue 3 December 2007

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わたらい先生

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ま、いいじゃないか(^^;

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