外部寄生虫

 便宜上、宿主の体内(内臓や血液中)に潜む寄生虫を内部寄生虫、体表や皮膚に見つかる寄生虫を外部寄生虫と呼びます。

シラミバエ
(図1.シラミバエ。この昆虫は、吸血によっていくつかの住血寄生虫を媒介する)

 
 外部寄生虫で目立つのは、ブユヌカカシラミバエです。これらの昆虫には羽根があって飛ぶので、視認しやすいという意味で、“目立つ”という言い方をしています。

 こうした昆虫には、ⅰ)吸血によって、トリ達に貧血を生じさせる、ⅱ)吸血後、痒みや痛みの原因となる毒素によりトラブルを生じさせる、ⅲ)吸血の際、住血寄生虫などの他の病原体を媒介するという性質があります。当然、その被害は数が多い時ほど大きなモノに成ります。

 こうした昆虫類は、可能な限り防除を行うべき対象になるのですが、これらを(猛禽類にとって)安全に効果的に防除する方法は、ありません。

 ブユヌカカについては、幼虫が生息し成虫の発生源となる水場の管理を行い、蚊帳などにより成虫の侵入を阻止します。
 実際には、虫のサイズが小さく網の目から侵入出来てしまうので、防除には殺虫剤を使わざるを得ません。被害の状況によって、ピレスロイド~有機リン剤まで、程度の異なる殺虫剤を、生物の体表~環境に対して使用します。最近ではペルメトリンやピリプロキシフェン(昆虫発育抑制剤;IGR)を併せて用いる事も行われます。こうした薬剤には、飼育鳥自身に対する毒性が発揮される可能性がつきまといます
 シラミバエは生活環の殆どを宿主の体表で過ごす事から、トリ自身への殺虫剤の噴霧や滴下が行われます。

 よく行われている、最も危険な(誤った)防除方法は、蚊取り線香の使用です。
 蚊取り線香に含まれている有効成分は温血動物に対して無害であるという理由から、鳥類にこの種の製品を使用しようとする誤解が生まれるらしいのですが、実際にはこの成分は中毒を起こす可能性がある薬品の一つとして紹介されている上に(1)、煙の吸入自体が有害です(おそらく、実際の死因はこちら。煙草の数十倍のタール量を提供すると言われている)。事故がよく起きるのは、密閉性のある屋内やガレージ内での使用です。
 確率的に事故の起きる方法なので、蚊取り線香の使用は推奨出来ません。

ベンガルワシミミズク
(図2.ブユ刺症によって、鼻部の羽毛が失われたベンガルワシミミズク。患者は、刺激による不快感から、無羽部となった領域を激しくこすり続けたと考えられる)

 ハエウジ症についても説明させてください。

 ハエウジ症とは、怪我や下痢便による汚れを、暑い時期に放置していると発生するトラブルです。
 湿性の汚れは通常強い臭気を放つので、ハエが集まり、周辺にが産み付けられます。結果、数日後にウジが発生します。
このハエウジ達は、本来であれば問題の無かった傷口や正常な皮膚を食い荒らし、周辺組織を修復不能な状態にしてしまいます。

 この疾病は、治療よりも予防が重要です。発生してしまってからでは、出来る事が限られます。
 予防として、負傷や寝たきりなど、問題を起こす可能性のある事が分かっているトリ達には、あらかじめ、駆除作用のある薬を予防的に滴下や噴霧しておきます。

ミサゴ
(図3.ハエウジ症の症例。受傷直後に適切な予防的投薬が行われていたら、来院の時点で骨折の手術を行えた患者だったのかもしれない)

 ダニ類には、英語でTickと呼ばれる大型のダニ(本邦での名称はマダニ)と、Miteと呼ばれる小型のダニ類があります。Miteには、胡麻よりも小さな肉眼でギリギリ視認出来るサイズのダニから、顕微鏡でしか見つける事の出来ない更に小さなサイズのダニ達が含まれます。Miteには、羽毛ダニ羽軸ダニワクモ疥癬など、様々な俗称が本来の学名や和名とは別に存在します。

 肉眼で見つける事が出来るのは、マダニ羽毛ダニ羽軸ダニワクモまでです。疥癬が猛禽類で見つかる事は、あまりありません。ダニ類の食性は様々で、吸血を行う種マダニワクモ、羽毛を食べる種羽毛ダニ羽軸ダニ、皮膚や組織を食べる種疥癬に分けられます。

 これらの中には、ダニ自身が宿主に直接被害を与えるだけでなく、他の伝染病の媒介として機能する場合や、原因不明な疾病状態を生じる場合(マダニ)があるので、1羽、ダニ類に寄生されたトリを見つけたならば、同じ場所で飼われている他のトリ達は、同時に(同様の)様々な危険に曝されていると言えます
 いずれのダニ類も、トリ達の体への駆虫剤の直接散布や経皮滴下により駆除が出来ます。同時に、環境中のダニ類の駆除を行う事も、よくします。

 これら以外に、トリ達の体表にハジラミが見つかる場合がありますが、治療はダニ類に準じます。

2014-06-11 10.20.19
(図4.イヌに咬着していたマダニの標本。鳥類に寄生するのは別種(Ixodes frontalis)。咬着後、マダニは急速に成長していく)


特記事項
マダニが咬着している場合が有名ですが、他の外部寄生虫(“刺す”虫たち)であっても、トリ達が急激に弱る場合があります。この様な場合は様子を観ないで、可及的速やかに来院してください。
市販されている殺虫薬には、鳥類にとって思わぬ毒性を発揮する製品が少なからず存在するので、勝手に使用しないで、動物病院で適切な処方を受ける様にしてください。

参考文献
1) エイビアン・メディスン, p190, インターズー, 2003
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ま、いいじゃないか(^^;

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