内部寄生虫

 一見ありふれている様で、いざとなるとストックしている写真がほとんど無い事に気付かされたのが、寄生虫疾患です。
 その原因として、ⅰ)世間で流通している猛禽類の主流が国産CB鳥である事と、ⅱ)飼い主自身があまりこの問題に注意を払って来なかった事が挙げられます。

回虫(オオタカ)
(図1.投薬後、排出されたオオタカのペリットには多数の線虫類(回虫)が認められた)

 
 この問題には猛禽類の出自が関係してくるので、簡単に用語の解説を済ませてしまいます。
 猛禽類には、CB鳥WC鳥があります。CBとは“captive breed”、すなわち“飼育下繁殖個体”を言い、WCとは“wild caught”、つまり“捕まえて来た野生の鳥”を意味します。

 例えば、“国産WC鳥”と言えば、国内に住んでいる野生の猛禽類で、動物園や保護収容施設で飼育されている野生の猛禽類を表してます。国産WC鳥は、国内法により、一般の人達は飼う事の出来ないトリ達です。“外国産WC鳥”は、海外で捕獲され日本に輸入された元野生のトリ達の事です。同様に、“外国産CB鳥”は、海外の施設で、つまり、飼育下で増えたトリ達を日本に輸入した事を意味します。

 国産WC鳥以外は、全て、販売と飼育が行えるトリ達の事です。
回虫(ノスリ)回虫(ノスリ)
(図2.国産WC鳥、すなわち、保護されたノスリの糞便中には回虫の虫体の排出が認められた)

 “国産CB鳥”は、外国産WC鳥や外国産CB鳥を日本国内で繁殖させた、その子孫です。
 このトリ達は、流通している猛禽類の中で、最も飼育管理について目の行き届いたトリ達であると言い換える事が出来ます。それは、与えられる食餌の品質や飼育環境の衛生管理の状況が“それなり”であり、駆虫なども行われた後に“出荷”されている事が多いので、結果として“きれいな”トリ達である事が多くなる様です。

 海外から輸入したトリ達は、WC鳥はもとより、たとえCB鳥であったとしても、通常何らかの寄生虫の感染があるのが普通です(図3を参照のこと)

回虫(オオタカ)回虫(ハリスホーク)
(図3.輸入鳥で見つかった寄生虫の排出。左;ハンドレアードのオオタカの糞便中に、回虫の虫体が排出された。右;ペアレントレアードのハリスホークの糞便中に、回虫の虫体が排出された。この寄生虫の寄生は、数年の間観察された)

 最も“目に付く”寄生虫は、線虫類と呼ばれるグループの寄生虫です。これらの寄生虫は、糞便やペリットの中に虫体が排出される事があり、糞便検査を行うと最もよく見つかる寄生虫卵が、このグループである事が多いと言えます。
 
 このグループには、回虫、気管開嘴虫(Syngamus trachea)、Capillaria spp.が属します。
 診断には、虫体を肉眼で確認するか、糞便検査により寄生虫卵の検出を行います。

pigeon20150715.jpg
(図4.ハト糞便サンプルより。毛体虫(Capillaria obsignata)の虫卵。 Capillaria spp.には、特徴的な卵栓が認められる。猛禽類で見つかる虫卵の写真が無かったので、ハトで代用した)

 糞便中などに虫体の排出があれば、“寄生虫がいる!”という状況はすぐに飼い主にも理解出来ますが、糞便検査や嗉嚢(そのう)検査を行う事でしか発見できない寄生虫というのもあります。

 こうした寄生虫には、吸虫類、コクシジウム、トリコモナス、ジアルジアなどがあります。
 いずれも、糞便検査や嗉嚢(そのう)検査によって、サンプルを直接鏡顕して診断を行います。

 これらの寄生虫は、感染があっても無症状~致死的な経過を辿るモノまで、様々な種が存在します。こうした寄生虫は、“水面下に潜んでいる脅威”である間に発見し、臨床症状が現れる前に駆除を行うのが望ましいので、定期的な検査が推奨されます。

コクシジウムオーシストコクシジウムオーシスト
(図5.コクシジウムのオーシスト。オーシストは成熟するに連れて、内部にスポロシストが観察される様になる。猛禽類で見つかるのは、Caryospora spp.(読みはカリヨスポーラ)である)

 上述の寄生虫は、全て糞便や嗉嚢(そのう)の検査によって見つかる事のある寄生虫です。
 こうした検査は、普通は年に1~2回程度、訓練を開始する前か、繁殖に入る前に、トリ達を連れずに糞便サンプルを持ち込んでもらい、それらを調べた後、必要であれば薬を処方し助言を行うという事をしています。
 口腔内に異常が見られる、下痢をしている、具合が悪いなど、具体的な臨床症状のあるトリ達については、トリ達の来院は必須です。

 これらの寄生虫以外にも、血液を検査すると見つかる、Leucocytozoon spp.、Haemoproteus spp.、Plasmodium spp.などがあり、これらの寄生虫の診断には、直接トリ達を連れて来院していただいて、採血後、血液塗抹標本を調べて感染の有無を確認します。

ニュージランドアオバズク
(図6.血液塗抹標本の例。鳥類の赤血球は有核赤血球であり、いわゆる好中球に当たる細胞をヘテロフィルと呼ぶ)


特記事項
猛禽類においてトリコモナス症は非常に有名な疾病ですが、典型的とされる口腔内の白色病変は、トリコモナス症以外の疾病でもごく普通に発生します。
 決して自己診断に走らないでください。当院では、必ず来院していただいた後、診断後に薬を処方する様にしております。
カリヨスポーラの治療を行おうとすると、鳥種によっては、昔から行われているサルファ剤の治療が無効(あるいは毒性の発揮が懸念される)ケースがあるので、必ず正確な鳥種(亜種名までは要りません)が分かる様にして来院してください。ハヤブサ類については、何のハイブリッドかまで分かっていた方が無難です。
1回の糞便検査や血液検査では、発見出来ない寄生虫感染もあります。定期的な検査は、寄生虫感染の発見頻度を上昇させます。死亡個体の病理検査など、異なるアプローチが必要になる内部寄生虫も存在します(図7)。

内臓幼虫移行症
(図7.死亡したワシミミズク雛の筋胃筋層に見つかった被嚢した寄生虫虫体。おそらく、線虫類による被害であると考えられる。HE染色)
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ま、いいじゃないか(^^;

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