用語解説 アトキソプラズマ

 Atoxoplasma spp.すなわち、アトキソプラズマ属の事を言います。
 むしろ私達に馴染みが深く、よく似ている名称に“トキソプラズマ”がありますが、これはToxoplasma gondiiという原虫の事であり、通常、一属一種として扱われます。

 とても紛らわしい名称ですが、アトキソプラズマとトキソプラズマは別種です
 本種には、トキソプラズマの仲間とされていた時期があり、その名残から、“avian toxoplasma → atoxoplasma”という命名は為されたという事になっています。
 
 長い混乱の中で、アトキソプラズマの感染鳥種自体にも混乱があります。
 本項で述べているのはスズメ目のトリ達に感染するアトキソプラズマです。アトキソプラズマには強い宿主特異性がある事になっているので、他の鳥種には感染しません。例えば、カナリアに感染するアトキソプラズマは他のフィンチには感染しない、文鳥に感染するアトキソプラズマはカナリアには感染しないなど、その宿主特異性はかなり強いモノになります。スズメ目の鳥種間での交差感染が言われた時期があった様ですが、それは否定されました。
 鶏にはトキソプラズマが感染する事から“avian Toxoplasma”と記載されたりしますが、感染するのはToxoplasma gondiiなので、アトキソプラズマとは関係ありません。トキソプラズマは、他にフクロウ類などにも感染します。宿主域の非常に広い原虫です。

 “アトキソプラズマ”という呼称は最初から使われていた訳ではなく、その混同と混乱の歴史は、本種に当たる原虫類が発見された1900年-1909年頃から始まったと言われています。
 研究の発表時期に不詳な部分も多く、そもそもが混乱のある情報を整理しようとしている作業なので、正確性には自信がありませんが、概ね、その変遷は以下の様であったと考えられます。

Haemoproteus 属(Plasmodium 属?):1900-1909
Toxoplasma 属:-1945(1937?)
Atoxoplasma 属:1950-
Lankesterella 属:1959, 1960-
Isospora属: Lankesterella 属の後に用いられた。
Atoxoplasma 属:再度分類された。“avian Toxoplasma”という記載も用いられた。
Isospora属(Atoxoplasma seriniIsospora serini:カナリア):2005

 Haemoproteus 属というのは鶏マラリアの仲間になりますが、マラリア自体はPlasmodium 属なので、初めから混乱が存在していた事になります。
 マラリアは赤血球に寄生する原虫類ですが、アトキソプラズマは単球などに影響する寄生虫であるからここから外され、トキソプラズマの仲間とされたが、感染の様式が異なる事からここからも外され、ワクモを媒介とする感染試験に成功した事から両生類に寄生するLankesterella 属の仲間と考えられたがコレも否定され(実は、糞便-経口ルートによる感染)・・・どうやら、一般的な認知はAtoxoplasma 属に落ち付く結果にはなった様だが、最近の分子生物学的な手法によって腸コクシジウム症の原因である、いわゆる“イソスポラ”とは一致しない臨床症状のある原虫なのだが)Isospora属の新種であると考えられる様になった・・・というのが、現在までの変遷です。

 上述の様に、名称の変更が1世紀以上に渡って続いてしまうと、臨床家にせよ研究者にせよ“いわゆるアトキソプラズマという、世間で通用していそうな名称を用いるしかなく、過去に発表された情報や、混同しやすい他の寄生虫の情報などが加わってしまい、とても理解しにくい寄生虫になってしまっているのがアトキソプラズマです。

 本種は、飼い鳥でいえばカナリアやフィンチ、野鳥ならスズメやムクドリで見つかる事のある、トキソプラズマに似た全身性コクシジウム症アトキソプラズマ症)の原因となる原虫です。
 Atoxoplasmaには数種が存在するので、カナリアに寄生するIsospora serini以外の種では、分類の整理がまだ完全には終わっていない様です。


 本項は、『Raptors, Pigeons and Passerine Birds』(BSAVA, 2008)の読解の為に、Wikipediaなど、ネット上から収集可能な情報で補完を行った“アトキソプラズマ”の、特にその名称の変遷に関わる解説です。おそらく、不正確な内容が混入しておりますが、これ以上調べようがないので、そのままにしてあります。


参考文献
1) Raptors, Pigeons and Passerine Birds, BSAVA, 2008
2) Atoxoplasma spp
3) Edith D. Box, Influence of Isospora Infections on Patency of Avian Lankesterella (Atoxoplasma, Garnham, 1950), The Journal of Parasitology , Vol. 53, No. 6 (Dec., 1967), pp. 1140-1147
4) J. R. Bartaa, M. D. Schrenzelab, R. Carrenoac, B. A. Rideout, The Genus Atoxoplasma (Garnham 1950) as a Junior Objective Synonym of the Genus Isospora (Schneider 1881) Species Infecting Birds and Resurrection of Cystoisospora (Frenkel 1977) as the Correct Genus for Isospora Species Infecting Mammals, Journal of Parasitology 91(3):726-727. 2005 doi: http://dx.doi.org/10.1645/GE-3341.1
5) 動物衛生研究所 電子顕微鏡で見た病原体 ToxoplasmaおよびAtoxoplasma
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ま、いいじゃないか(^^;

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