用語解説 Tracheal abscess、Tracheal granuloma、Peritracheal lesion

 鳥類と哺乳類の解剖学的な構造の違いから、同じ英語が同じ日本語に変換されない、その様な概念とは言えなくなるという事が起きます。
 
 Tracheal abscessTracheal granulomaは、ヒトではそれぞれ“喉頭膿瘍”、“喉頭肉芽腫”と訳されます。これらは、(もちろん、他の理由であってもいいのですが)気管挿管などによって喉頭部分に傷が付く事によって発生するトラブルです。

 鳥類には哺乳類と一致する喉頭が無いので(構造が異なっている)、この辺りの事情が異なります。
 鳥類には声帯が存在せず鳴管で発声が行われ、この構造は哺乳類の“喉”よりも体内に位置するので、“Tracheal -”が“喉”に限局した問題について用いられる用語とは言えません。
 鳥類では、これらの用語は、(少なくとも、“喉”とは言えない。部位も定かでない)気管膿瘍”、“気管肉芽腫”としか訳せません。他の原因であってもいいのですが、やはり、鳴管型(気管型)アスペルギルス症における膿瘍や肉芽腫について使われる事の多い用語であり、その様な部位を説明する意図で用いられる用語がTracheal abscessTracheal granulomaなのだと言えます。

 同様に、Peritracheal lesionというのがあります。
 哺乳類で用いられるよく似た英語に、Peritracheal abscess(気管周囲膿瘍)があり、気管周囲に発生した膿瘍が気管を圧迫する事によってトラブルが発生するというのが、その用法です。
 鳥類でこういうトラブルは見かけないので、Peritracheal lesion(気管周囲の病変)という表現が用いられ、この“周囲”というのは、むしろ頸部よりも体腔内にある胃や嗉嚢(そのう)、腹水などの圧迫によるところが大きくなると考えられます。

 何となく読み飛ばしてしまうだけの言葉ですが、“何故そんな言い方をしているのか?”その背景にあるモノを考えていくと、原著をより深く理解する事が可能です。
;上記の訳語は、筆者が勝手にその様に訳しているだけで、日本の鳥類臨床上、何らかのコンセンサスが得られている用語という事ではありません。将来的に、異なる訳語が定着する場合があり得るという事を、断らせてください。っていうか、これより“格好いい”訳を誰か作りませんか?)

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ま、いいじゃないか(^^;

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