用語解説 可溶性カルシウムあるいは可消化性カルシウム(soluble calcium)

 栄養学上のカルシウムの扱いは、本来の食餌内容(種子食など)では不足してしまうソレを、補充する事にあります。
 日本語の、サプリメントとしてのカルシウムの説明を読んでいると、英語でのカルシウム補充の解説が理解出来なくなるかもしれません。それが、この“soluble calcium”という表記です。
 
 “soluble”は、“溶解可能”という意味になるのですが、この場合、普通なら溶媒は水である前提なので、“水溶性カルシウム”、“可溶性カルシウム”という訳が作れます。どちらの日本語を使ったとしても、ソレが辞書に書かれていた通りに理解しているのであれば、原意が“水に溶けるカルシウム”であった事は変わりません。
 ところが、実際に鳥類に与えられる事のある、“soluble calcium”と呼ばれている製品を確認すると、カトルボーン、“soluble grit(ボレー粉)”、watersoluble supplement(水溶性のサプリメント)とあり、これらは全て炭酸カルシウムから成る製品であり、炭酸カルシウムはそのままでは殆ど水に溶けないので、“水溶性”という訳は誤りである事が分かります。
 水溶性のサプリメントについては(例、ネクトン)、他のカルシウム塩も含まれている可能性が残りますが、逆に炭酸カルシウムの使われてない“水溶性の”サプリメントというのも、見つける事が出来ません。

 炭酸カルシウムは水には殆ど溶けないので、その水溶液は白濁します。このカルシウムを溶かすには、が必要です。このカルシウムは炭酸や食酢に溶けるので、そうした溶液は透明になります
 ヒトのサプリメントには、“水溶性カルシウム”というのが本当にあって、これは、そのまま水に溶かす事の出来る乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウムの事をいっているのですが、ふつう、鳥類の飼料には添加しません。

 炭酸カルシウムが使用されている製品の内、“soluble grit(ボレー粉)”について調べていくと、状況が少し整理できます。
 “soluble grit(ボレー粉)”は、本邦では可溶性グリットの訳が用いられている事のある、鶏の飼料添加物の名称です。グリット(grit)とは、穀物食のトリ達の筋胃内にあって、食物の摩砕を助け、栄養の吸収率を向上させる働きがある、いわば小石です。これを、餌に混ぜて与えます。

 正確には、グリットには2つのタイプが存在します。すなわち、Flint grit(insoluble grit)とsoluble grit(ボレー粉)です。前者が石(Flint)をグリットとしているのに対して、後者はボレー粉(カキ殻)をグリットと呼んでいます。
 この2種のグリットの、飼料の摩砕効果と飼料効率等への影響(つまり、よく肉が付いたり、卵の数や質が向上するという効果)については、随分昔に調べられていて(1)、ボレー粉にはその様な効果は期待しないのだけれども(本来の“グリット”としての効果は無い)、ボレー粉にはカルシウムの供給源としての役割があるので、現在でも“グリット”としてボレー粉を与えているのだというのが、実際の事情になります。
 つまり、soluble gritは、栄養素の一つとして“消化管内で溶けて無くなる”事を前提に与えているので、その事を“soluble”と表現していた事になる訳ですが、こうなると溶けるのが水であるか酸であるのかという事は、実はあまり問題になっていなかった事が分かります。
 すなわち、3つのカルシウム供給源は、それぞれ、“消化管内で溶ける”か“水に溶ける”製品で、“soluble”とは2種類の“溶け方”について述べていた英語表現だったという事です。

 おそらく、ネイティブスピーカーらは違和感無く使えるであろう“soluble”という英語ですが、日本語に変換しようとすると、“それ自体が何らかの液体に溶ける”という意味と、“溶けて無くなる”という両方の意味を想起させる日本語が上手く作れないので、とても理解しにくい概念になってしまいます。
 この用語は、ある程度鳥類の栄養学のバックグラウンドに詳しい人達にしか通用しないかもしれない(そうでない人達には誤解される)、いわゆる専門用語なのかもしれません。

参考文献
1)伊藤 柴朗, 鶏に対する砂粒給与試験 : 筋胃内の砂粒分布の移動, 研究論叢.自然科学vol15.No2, p85-p90, 1966


 

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ま、いいじゃないか(^^;

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