用語解説 ALT(GPT)

 哺乳類の血液生化学検査において、肝臓を評価する時のゴールデンスタンダードと呼ぶべき検査項目にALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ, GPT)がありますが、鳥類では、この検査に臨床上の意義が見いだされる鳥種はごく限られたモノになります。
シロフクロウ液体貯留
(当院症例より。肝疾患に由来する腹水症によって呼吸困難を来したシロフクロウ(7)。レントゲン撮影を行っても気嚢が確認出来ない)

 “肝臓損傷のある猛禽類(raptors)、鶏、およびアヒル、パチェコ病のオキナインコ(Quaker Parakeets)で血液ALT値の上昇が報告されてますが、ALT値は肝臓疾患全部で上昇するとは限らず、したがって鳥類の肝臓病の診断指標としては有効ではないと信じられています(1)”。パチェコ病とはヘルペスウイルスの感染症の事で、このウイルスはウイルス性の肝炎を引き起こします。つまり、猛禽類、鶏、アヒル、オキナインコでは、肝臓に異常があるとALTが上昇する事があるのだという意味です。

 おそらく(哺乳類での)習慣的な理由から、古い文献の巻末にはALTの測定値が記載されてきましたが(2,3,4,5)、ほとんどの鳥種で、測定値自体が低値であり、しかもその酵素の放出が肝細胞に由来しない事から、最近の文献になるほどその箇所は空欄にされている事が多くなっております。

 哺乳類では、ALTは肝臓に特異的に分布している酵素であり、その血清数値の上昇は、肝細胞が特異的に傷害されているという事を意味します。
 鳥類でALTの上昇が見つかった場合、その数値の上昇が肝臓組織の破壊に由来する場合がある事が示されている鳥種以外では、どこから放出された酵素かすら定かではありません。それほど、ALTの分布は鳥種によって多様です。

 それでも、肝臓の異常のあるなしについて評価を行わない訳にはいかないので、ほとんどの鳥類では、AST、CK、LDHについて測定し、この3つのパラメータを用いて“総合的に”肝機能を評価するという事が行われています。
 ASTは、哺乳類でも測定されているパラメータですが、本来肝特異性が低く、肝臓の異常によって上昇している場合もあればそれ以外の理由によっても上昇する事がある指標です。鳥類のASTも同様であり、哺乳類に比較しても普段から高値が得られてしまうので、感度の高い測定とは言えません。この問題を修正する為に、同時にCK、LDHを評価しています。これは、爬虫類の血液検査でも同じ事が言われています。

 結論として、鳥類には特異性の高い信頼出来る肝疾患の血液生化学検査法というのは無いので、レントゲンや超音波検査、肝生検を行うなど、より多くの情報に基づいた総合的な評価を必要とします。
肝臓
(当院症例より。このシロフクロウは、生前に血液ALT値のみが高値であり、死後肝臓に病変が見つかった。こうした病変は、肝臓以外では見つかっていない(7)

 猛禽類では、最近の文献でもALTの正常値について記載があり(6)、総合的な評価の為のパラメータの一つとして、今でも機能している事が分かりますが、それは他の鳥種に対してとても例外的な事です

1)鳥類の内科および外科臨床p222, LLLセミナー, 1997
2)鳥類の内科および外科臨床p744-p746, LLLセミナー, 1997
3)Avian Medicine(エイビアン・メディスン)p345-p374, インターズー, 2003
4)鳥類の内科学と外科学p1005-p1022, NEW LLL PUBLISHER, 2008
5)オウムインコ類マニュアルp184, 学窓社, 1999
6)Raptors, Pigeons and Passerine Birds p394-p398, BSAVA, 2008
7)血清肝酵素値に異常の認められたシロフクロウ(Bubo scandiacus)の一例(渡会博和・わたらい動物病院), 2010 

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ま、いいじゃないか(^^;

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