用語解説 determinate egg layersとindeterminate egg layers (poultry)

 英語では“determinate-とindeterminate-”という順で表記される事が多い様ですが、日本語では順序が逆になって扱われている事が多く、(以下、全て英語表記とは順序が逆です)、補充産卵性と非補充産卵性。補充産卵と一定数産卵。補充産卵性と連続多産性。不決定産卵性と決定産卵性という訳(あるいは対比)がありますが、定訳がありません。
 最も目にする用語は、補充産卵性と非補充産卵性の様です(英語表記ならindeterminate egg layersとdeterminate egg layers という順序になる)。
 
 この用語には、かなりの混乱が存在しているらしく、鳥類医学というのは慣例的な一般用法や便宜上の用語を使用している場合もあれば、正しく鳥類学上の定義と用法でもってそれらを説明している場合がある分野なので、書籍間でこの事について書かれた情報を対比すると、モノスゴイ混乱が待っています

 さて、“determinate-とindeterminate-”、すなわち“決まっている-と決まっていない-”とは、どういう事なのでしょうか?

 まず初めに出て来るのが、家禽(採卵鶏やウズラ)とそれ以外の飼い鳥を区別する為に用いられている用法です。
 前者はただひたすらに産卵を続けるタイプのトリ達であり(indeterminate egg layers(poutltry)。“poultry”は“家禽”という意味です)、後者は巣内に一定の数の卵を“保つ”事に腐心するトリ達(determinate egg layers。すなわち、巣内の卵の数が(本来の自然の状態では)決まっているトリ達)で多くの野鳥が該当し、元々が野鳥であったインコ・オウム類や猛禽類、フィンチなども全てこれに分類されます。断る必要は無いかもしれませんが、このくくりはかなり大ざっぱなモノです。
 一般的とは言えませんが、獣医療の分野では、(アホウドリの様な特殊な鳥種を診療しない獣医師にとって)この解釈で諸々を理解していたとしても、特に実害がありません

 ここで違和感を覚えるとしたら、鳥類学上、こうした用語はかなり違った形で定義されて用いられている事を知っている人達でしょう。特に飼育書などでは、むしろ鳥類学上の用法と解釈でもって、こうした用語は紹介されています。
 すなわち、産卵数の決まっているトリ(determinate egg layers)とは、性腺刺激ホルモンの刺激に応答する卵胞の数と産卵数が等しくなっている種であり、産卵の開始時には産卵数が決まっています。抱卵期間中、卵を取り除いても追加しても、産卵数には影響しません(一定数産卵非補充産卵性)。つまり、産み足しをしないトリ達を言います。
 産卵数の決まっていないトリ(indeterminate egg layers)とは、ふつう、ホルモンの刺激に応答する卵胞の数が産卵数(つまり、巣内にあるはずの卵の数)よりも多い種の事です。卵胞はホルモンの刺激に非同期的に応答するので、産卵期の間中、遅れて応答した卵胞の発達は巣内に卵があっても阻害されません。これらの種では、卵を取り除いた場合、正常の産卵数以上の産卵を続け、巣内の卵の数を保とうとします。すなわち、産み足しをするトリ達の事です(補充産卵)。ニワトリの様に、産んだ卵を取り除き続けると、1年中卵を産む種もいます(連続多産性)。
 調べていくと、産卵数の決まっていないトリ(indeterminate egg layers)は更に3つのタイプに分かれる事や、その鳥種の産卵数によって出現傾向に差異が現れる事など、詳細な情報を見つける事が出来るのですが、臨床とは関係ないので、この先は省略します
過剰産卵20070724

 いずれにせよ、ニワトリが後者(indeterminate egg layers)である事に違いはないのですが、両者の境界は曖昧な事があり、例えばイエスズメでは、一体このトリはdeterminate egg layersなのかindeterminate egg layersなのかという事が議論されたりしております。鳥類臨床では、セキセイインコがこういう混乱のある鳥種に該当するはずなのですが、あまりそういう事も言われておりません(そして、混乱だけが残っている)。区別のハッキリしない鳥種が現れるのが困るというだけでなく、そもそもの“猛禽類”、“インコ・オウム類”というくくりの中に、それぞれの産卵パターンが混在する状態に成るので、よほど習性について学問的に追究したい方達以外は、複雑すぎて理解が難しくなります。
 さらに、日本語でこういう性質を説明しようとすると補充産卵性(ニワトリはこちら)と非補充産卵性という用語が登場してくるのですが、前者がindeterminate egg layers、後者がdeterminate egg layersに相当する事になり、否定を表す接頭辞がそれぞれ逆に付いている事になるので、こここでも一つ混乱が生まれます。

 臨床家にとっての用語とは、その疾病なり健康状態なりを、よりよく理解する為のモノでなければなりません。仮に他の分野で同一の用語が異なる使用をされていたとしても、そちらの混乱をこちらに持ち込む様な事になってしまっては、本末転倒です。

 鳥類臨床では、こういう用語はそもそも病的な状況(異常事態)を理解する為に用いられるので、臨床家は鳥類学上の用語の用法を踏まえつつ(そういう視点で記述されているテキストも存在するので)、実際には最初に紹介した様な、大量の卵を産もうとする家禽(タイプ)と、少数の決まった数の産卵をしようとするとする鳥種(タイプ)を区別する意味でdeterminate egg layersとindeterminate egg layers (poultry)という言葉を理解しておくのが、後々、混乱しにくい様です。
 すなわち、ニワトリの様な産卵をするトリ達(indeterminate egg layers)では、適正なCa:P:D3比の飼料を必要とするのは当然だが、そのカルシウム要求量を比較すると、より産卵数の少ないdeterminate egg layersでは、適正なCa:P:D3比同じであっても、実際の必要カルシウム量はとても少ないといった理解の仕方をします。

 いずれにせよ、全く同じ用語が異なる視点と理解から用いられている事のある、スッキリとした理解のし難い用語のひとつです。

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ま、いいじゃないか(^^;

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