用語解説 換羽ステージ

 鳥類の外観の変化(羽衣(plumage)の変化)は、おおよその年齢を示すのに用いられています。言い換えれば、トリの成長過程は、換羽ステージを使って説明されていると言えます。
 こういった名称を使用すると、野外で野鳥の観察をしている人達は、報告がしやすくなる訳ですね(例。“第2幼綿羽のオオタカ巣内雛”)。
 
 
 こうした羽毛の変化に関連した名称は、経験と観察から自然に出来上がる事も多く、古来より続いてきた本邦の鷹狩りの世界でも、羽毛の変化とその鷹の年齢を表してきた表現というのがあります。
 片塒(かたとや)とは巣立ち後1回目の換羽を経験したトリを、両塒(もろとや)はそれ以降、完全に親鳥と同じ羽毛に換羽したトリを言います。他にもオオタカの巣立ち雛を黄鷹といい、成鳥を蒼鷹と呼びますが、これも羽毛の変化を表している言葉です。いずれも学術系の用語ではないので、バードウォッチングも含めた趣味の世界でしか用いられませんが、鳥類の羽毛の変化とはそれ程までに分かりやすいモノであったと言える事例でしょう。

 臨床という事を考えた場合、野鳥観察の様にこうした羽毛の変化を覚える意義は低い様に感じられますが、それは猛禽類の時の話で、インコ・オウム類など、非常に若い雛達が、成長に伴う換羽を行う毎に遭遇する可能性のある疾病(PBFDなど)がある場合は別です。“幼綿羽から幼羽に生え換わる頃に異常が見つかる事がある”といった様に、その時期の雛達を特に注意して監視する役に立つ用語になるからです。

 以下に示すのは、ハリスホークの羽毛の推移です。猛禽類以外の鳥種では、必ずしもこの過程をたどる訳ではないのですが、猛禽類では、臨床系の文献に登場しそうな名称が全て紹介出来るので、例に挙げました。
 学術上の用語の正しさの問題がありますが、“この様な理解と混乱の元に、鳥類臨床はなんとか回っている”という紹介でもあります。
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 孵化直後の雛(つまり、ひよこ)の中には羽毛が生えていない鳥種もありますが、たとえ羽毛があったとしても、その性状は親鳥のソレとは大きく異なり、保温機能などは殆どありません。

 こうした時期の羽衣綿羽(down)ないし幼綿羽(natal down)と言います。雛の時期は、特に断りも無く綿羽(down)と呼ぶ事も多いのですが、成鳥の綿羽(adult down feather)と区別する意味で幼綿羽(natal down)と使い分けをしている場合もまた多いという事です。
 初毛羽(natal plumage)という言い方もある様ですが、外観(羽衣)を示さずに羽毛の種類として用語が機能している場合がある様なので、注意しなければなりません。

神楽っ子とその仲間達20070809 (1)

 どの程度の鳥種でそういう言い方をしているのか不明ですが、しばらくすると、保温性のある綿羽が生えてくるので、これを第2幼綿羽(secondary down, second natal down, second nestling down)と呼んでいる文献があります。
2014-06-20 15.12.46
 例えばスズメの様に(右の写真)、丸坊主の雛で生まれてくる鳥種というのもあるので、こういう言い方が適応されない鳥種はごく普通にいます。


2012-08-12 19.46.28

 幼綿羽の雛達は、次第に飛翔能力のある正羽が生え始め、幼羽(juvenile plumage)へと移行します。

ハリス雌20070917

 幼羽の生えそろった後の、第1回換羽までの成長段階にあるトリ達を幼鳥(juvenile)と呼びます。幼羽の生えそろう頃のステージから先を巣立ち雛(fledgling)、それ以前を巣内雛(nestling)という言い方もしています。

 この辺りの用語は、元からある日本語表現と後からやって来た外国語(邦訳)表現との間で言っている事が違う、そもそもの定義や境界線のハッキリしない用法があるなど、混乱の原因にもなっている様です。

2014-08-20 06.16.12

 羽衣を用いた表現では、このステージを成鳥羽(成羽)という言い方をします。ただ成鳥と呼んだ方が、分かりやすいですね。

 猛禽類の場合、成鳥は春~秋頃にかけて毎年換羽を行うのですが、繁殖能力のある、完全に大人である証拠でもある羽衣に成るのには、数年を要します。この過程にある鷹達を、鷹狩りの世界では、片塒(かたとや)と呼び、成鳥に当たる、大人の羽毛に成ったトリ達を両塒(もろとや)と呼びます。若鳥(immature)という言い方があるのですが、臨床上、患者がこの辺りのステージにある事による特記事項の様なモノは現れないので、アバウトに“若鳥/成鳥”という理解をしても困りません。

 主に羽衣(外観)に基づいたトリの成長段階の説明は以上です。

 この他に、年齢ステージを分けた言い方として、ひな(chick)幼鳥(juvenile)成鳥(adult)(←この用法の時は、上記の場合と違いchickとjuvenileの境界がハッキリしない)、成鳥でないという意味で若鳥(young)雛の時期が含まれている用法)など、解釈と用法にバラツキのある表現が存在します。
 特に“総説”と呼ばれるモノを読む時、その構成は原著からの引用(コピーペースト)になる為、こうした用語が混在してしまい、混乱を来す事があります。
 そうした用語は、鳥類学上の用法をしているのかもしれないし、家禽の名称なのかもしれない、一般用法と呼ぶべきモノも混じっているかもしれません。知っていれば混乱しにくいという程度の話ですが、おそらく、初めてそうした文献を読んだ人は、とても困る時もある、これらは、そういう用語の群れです。

 

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ま、いいじゃないか(^^;

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