用語解説 アデノウイルス

 鳥類のアデノウイルスについて理解しようとする時、その分類の変遷と、本邦での独特な用語上の慣例あるいは英文表記との齟齬について、理解しておかなければなりません。
 
 “鳥類のアデノウイルス”の英語表記は、“avian adenovirus”ですが、これは一般名あるいは集合名であって、学問上の表記は別にあります。訳し方によっては、“鳥アデノウイルス”、“トリアデノウイルス”という表記も存在します。

 元々、アデノウイルス科には2つの属、すなわち、マストアデノウイルス属(哺乳類のアデノウイルス)とアビアデノウイルス属(鳥類のアデノウイルス)がありました。
 この内、アビアデノウイルス属は、グループ1~3という更に3つのグループに分けて整理されており、のちの学問の進歩によって、遺伝子系統解析の結果から、これら3つのグループは、それぞれの属に割り振られました。
 現在のアデノウイルス科は、5つの属に分けて考える事が提唱されています。

1.マストアデノウイルス属(genus Mastadenovirus); 代表種:ヒトアデノウイルスC型(Human adenovirus C)
2.アビアデノウイルス属(genus Aviadenovirus); 代表種:ニワトリアデノウイルスA型(Fowl adenovirus A。FAVのこと)
3.シアデノウイルス属(genus Siadenovirus); 代表種:カエルアデノウイルス(Frog adenovirus)
4.アタデノウイルス属(genus Atadenovirus); 代表種:ヒツジアデノウイルスD型(Ovine adenovirus D)
5.genus Ichtadenovirus; 代表種: Sturgeon adenovirus A ←チョウザメのアデノウイルス

 この内2~3が、以前のグループ1~3に相当します。鳥類のアデノウイルスについて述べる場合、この3つの属のいずれかに含まれるアデノウイルス種が、トリに感染していたという事になります。

 特に、アビアデノウイルス属で以前のグループ1に含まれるウイルスを、“鶏アデノウイルス”と表記するのが、我が国の畜産関係の文献では習わしとなっています。
 鶏アデノウイルスには12の血清型が知られ、英文ではFowl Adenovirus(FAV)と表記されます。具体的には、FAV-1、FAV-4などと記載され、ウイルス株や血清型、プライマーの説明に用いられるので、こういう表記を避けて通る事は出来ません。
 “fowl”を辞書で調べると、

家禽(かきん), (家で飼う)大型の鳥 《アヒル・七面鳥など》; (特に)鶏.(Weblio辞書より)

 とあります。“fowl”は、ニワトリ以外の家禽でも意味が通じる言葉なので、“鶏アデノウイルス”という表記が最多であると考えて問題無いとは思うのですが、自然科学、あるいはヒトの医療分野でのこのウイルス種の記載を確認していくと、ニワトリアデノウイルストリアデノウイルスという記載が登場してくるので、注意しなければなりません。
 こうした、混乱しやすいよく似た用語のパズルを、キレイにはめ直す事によって、こうした文献は読み進めなければなりません。

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ま、いいじゃないか(^^;

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