にわとりのエサ/あひるのエサ

 ホームセンターなどで手に入る“にわとりのエサ”とは、全て養鶏用の飼料です。ペットのニワトリやウズラの飼育には、この養鶏用飼料が使用されている事が多いのですが、この飼料はアヒルやアイガモなどの飼育にも用いられるので、タイトルは“にわとりのエサ/あひるのエサ”としました。

ウズラ
(図1.“にわとりのエサ”で飼育されているウズラ。この飼料にはいくつかの種類があるが、全体に高いエネルギー量と高たんぱく質をしており、ミネラルやビタミンについても豊富に添加されている)

 
 “養鶏”とは、採卵や食肉を得る事を目的にニワトリを飼育する事なので、トリ達はその“経済寿命”に基づいて(商品価値や採算によって)、短期間で寿命を終えます。おそらく、その期間とは、採卵鶏ならば2年程度、肉用鶏ならば7-8週間になります。
 一方で、ニワトリの生理的寿命(最大寿命)というのはかなりあって、ネット上で収集可能な数値だと10~20年という事になります。

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(図2.アヒルの趾瘤症。クラス4。既に骨質に影響が及んでおり、患者は起立が出来ないでいる。この患者は養鶏用の飼料を給餌されており、肥満していた)

 実際によく遭遇する“ペットのニワトリ”の寿命とは、養鶏なみの数ヶ月から始まって数年~せいぜい5,6年程度です。この短い寿命の原因には、“にわとりのエサ”が関係していると言われております。
 この飼料は短期間のニワトリの飼育を目的としており、その期間中にトリ達は大量の産卵を行うか、通常の鳥類では考えられない量の筋肉を発達させます。“にわとりのエサ”には、炭水化物や脂肪、たんぱく質のレベルはもとより、ビタミン、ミネラルに至るまで、他の鳥種の飼料と比較して高いレベルが含まれており、トリ達は“養鶏”のトリ達よりも長期間その状態を維持されるので、過量な体重による関節や足底のトラブル(趾瘤症)(図2)、肝臓や腎臓、内臓痛風、脂質代謝の問題や循環器の問題など、いわゆる肥満や生活習慣病に該当する諸問題をよく体験する様になります。雌鳥の場合、これらに繁殖の諸問題が加わります(高濃度飼料による過度の発情の誘起など)(図3)。

腹壁ヘルニア
(図3.腹壁ヘルニアのニワトリ。このトラブルを回避するには、適正な体重を維持し、産卵数を減らす為の飼料の給餌が推奨される)

 養鶏場のトリ達と同等の採卵や増体(体重や筋肉量の増加)というニーズが存在しない場合、ペットのニワトリ達に推奨されるのは、より“薄い”飼料であるハトのエサやインコ・オウム類に使用されるペレットをベースに、栄養添加や日光浴を奨励するという飼育です(図4,図5,図6,図7)。

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(図4.野外を放浪していたニワトリ。羽毛の状態は悪く、筋肉は失われている)

 多くの“家禽”は、本来の野生種に比べて遺伝的に大型化しており、“異常な”体重に育ってしまう事が多いので、(関節や足底部を体重から守るために)それを抑制しなければなりません。

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(図5.図4のニワトリの20日後である。このニワトリは、エネルギーの喪失を最小にする為に屋内のダンボール箱の中で管理され、“鳩のえさ”を与えられた。新しい羽毛の伸長に注目)

 同様に、雌鳥に過大なエネルギーを与え続けるという行為は、異常な産卵数の原因になり得るので、(低エネルギー食の給餌だけでなく)体重制限と運動の奨励をこれらに加えるべきです。

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(図6.羽毛が十分に生えそろった後、このニワトリは屋外で放飼された。やはり、与えられているのは“鳩のえさ”である)

 養鶏用飼料中に使用されている“魚粉”は、それ自体が増体や発情を誘起するだけでなく、添加量によっては筋胃びらんの原因となる事や、含有する油脂の酸化による変敗による(トリ達への)健康被害が言われるので、“ペットのニワトリ達”に、この飼料成分を与える必要はありません。

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(図7.このニワトリは、時折産卵し、十分に硬い厚い卵殻をした卵を産んだ)

 いわゆる固定観念から、“○○には○○の餌”という与えられ方がよく行われますが、実際に与えてみるとトリ達は実に様々な食餌を口にします(図8)。その鳥種が野生で摂取していたであろう食餌内容を完全に再現する事は不可能なので、トリ達には飼育下で手に入る食餌を用いて、そのトリ達の飼育下での健康な生活に必要なだけの栄養素を“過不足無く”与える様にするべきです。それが、“理想の飼料”です。

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(図8.“鳩のえさ”で飼養されているカルガモ。水鳥についても、“にわとりのエサ”以外での飼養は可能である)

 “過量に摂取されたカルシウムは、糞便として排出されるので無害である”という事が言われますが、必要量を満たさなかった場合、そのトリ達には代謝性骨疾患(MBD)や低カルシウム血症に関連した症状が現れるかもしれません(図9)。カルシウムは、同時に摂取するリンの量によって影響を受けるので、“適正な添加量とカルシウム:リン比(Ca:P比)を守る”という事が言われております。その推奨比は、1:1~2:1です。

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(図9.インコ・オウム類に用いる“鳥用ペレット”による飼養。左;ハト。中央;カンムリウズラ。この飼料は、養鶏用飼料に比べると、カルシウムやビタミンD3含量の低い飼料である。右;中央のカンムリウズラの産卵した軟卵。この飼料はややカルシウムに乏しいので、1年目の若い雌鳥は軟卵をよく産む)

 ビタミンD3は、食餌中に含まれるカルシウムの吸収を促すために必要な栄養素です。この成分は、直射日光の中に含まれる紫外線によって皮膚で化学的に合成されます1日45分以上の直射日光が推奨されている。その合成量は(皮膚では)一定以上増える事が無いのですが、直接経口で摂取していると、(どれ程量を守っていたとしても、いつの間にか皮膚が紫外線を浴びている事があるので)中毒量に到達してしまう事があります。この場合の中毒とは、“多過ぎるビタミンD3の存在によって生じる、カルシウムの異常な体内への取り込み”の事を言うのですが(ビタミンD3中毒)、この現象は、食餌中に存在するカルシウムとリンの量とバランスによって大きく変化するので、よく“Ca:P:D3比”という言い方が為されます。

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(図10.最も適正なビタミンD3の摂取方法は日光浴であり、運動は摂取した過量なエネルギーを消費させる)

 養鶏用飼料の過量な栄養量の実害について、説明してまいりました。この飼料は、犬用のフードで言うところの“グロース”、すなわち成長期(子)ないし授乳期用(親)のフードに相当します。こうしたフードを必要とするケースには、成長期や授乳期の個体以外に、“使役犬”が該当します。
 屋内飼育が行われており、過量な栄養と体重(さらに運動不足)によって不健康な生活を送っているニワトリ達に比べて、高エネルギーな養鶏用飼料を与えられつつも屋外で自由生活を行い、さらに恒常的に低温に暴露されている個体群は、かなり健康です(図10)。これは、運動と低温暴露によって、“ほどよく”エネルギーが消費されている結果に他なりません。
 すなわち、(可能であれば)最も重要なのは運動であり、それが出来ない場合は、食餌内容に手を加えるべきであるというのが、本来の考え方です。もちろん、ペットとして10年以上ニワトリを飼育する事を目指すのであれば、その両方について注意するべきです。

特記事項
健康な生活をさせろ”。おそらくそれに尽きる話題ですが、意外に理解されていません。
適正なCa:P:D3比とは、“きちんと日光浴をして、正しい食餌を摂る”生活をしていれば、ごく自然に達成されます。
正しい食餌とは、養鶏用飼料以外の食餌を与えている生活です。
体重を時々確認する様にすると、適正な餌量を守る事が出来ます
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わたらい先生

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ま、いいじゃないか(^^;

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