用語解説 non HDL
F式によって、採用可能なLDLコレステロール値の算出が出来ない場合、参考値として“non HDL”という数値を用います。慣用的に、“non HDL”あるいは“non HDL-C”と呼ばれます。当然ですが、コレステロールの数値です。
この数値には、CM、VLDL、IDL、LDLといった、HDL以外の全てのコレステロール値が含まれます。
non HDL-C= TC - HDL-C
TC: 総コレステロール値(mg/dL)
HDL-C: HDLコレステロール値(mg/dL)
この数値には、CM、VLDL、IDL、LDLといった、HDL以外の全てのコレステロール値が含まれます。
non HDL-C= TC - HDL-C
TC: 総コレステロール値(mg/dL)
HDL-C: HDLコレステロール値(mg/dL)
ヒトでnon HDLが高いという事は、中性脂肪(TG値)が高値であっただけでなく、暗にLDLコレステロール値も高値なのではないか(?)という背景が考慮されます。そのため、動脈硬化症の指標として機能させる事が可能なので、基準値が設けられています。
(注 中性脂肪が高値であるという事は、VLDLが高値にある状態を指しており、糖尿病などが示唆される場合があります)

ところが、鳥類では“産卵”という特殊な生理が存在するので、一概にヒトの様な“不健康な”状態を想定しません。産卵中の雌ウズラの場合を、例に挙げます。
生化学検査によって得た各測定値から、non HDLを算出しました。
総コレステロール(TC)=178(mg/dL)
中性脂肪=740(mg/dL)←再検査済み, 乳びの出現はありませんでした。
HDL-C=59.1(mg/dL)
non HDL-C=178-59.1=118.9(mg/dL)
仮にF式を用いて計算したとすると、LDL-C値はマイナスになってしまい、意味を為しません。LipoTESTの波形パターンから、わずかですがLDLコレステロールが存在している事は、明らかです。
LDL-C = 178 - 59.1 - 740/5
= 118.9 - 148
= -29.1(mg/dL)
non HDL-Cの値が118.9(mg/dL)であるという事は、ヒトの場合だと目標値を満たしてはいるのですが、冠動脈疾患の既往がある場合のその数値とは< 130の事であり、際どい位置にある数値である場合も、あり得るのではないか(?)という懸念が生じます。
“答え合わせ”の為に、ヒトでは十分なサンプル量が得られやすいので、参考値として直接測定によりLDL-C値を知る事が出来ますが、鳥類ではサンプル量の制限からコレは難しいので、背景に自信が無い場合は、はじめからLipoTESTによって確認を行うのが無難です。
鳥類の産卵は、体内のLDLコレステロールを大量に体外に排出する生理現象なので、全体に総コレステロール値(TC)はそれ程でもなく、LDLコレステロール値は低値ですが、脂質の動員のためにVLDLに関する数値(TG)は、高値を示します。 non HDLの算出しか出来ない場合に、どういう状態の時にnon HDLの数値に対してLDL-C値が低値である事が考えられるか知っておけば、この数値によっても、おおよその動脈硬化症のリスクを知る事が出来る場合があると考えられますが、まだ情報が不足しているので、non HDLの数値のみによって状況を判断するのには、無理があります。
ただし、こうした数値の基準範囲について述べられているボウシインコ類の文献が、既に発表されております(1)。(僕の感想に過ぎませんが)まだ、こじつけや無理矢理感が目立ち、詳細な背景に関する、知見による肉付けが不足しているのが実体です。数値の提示が背景の整理よりも先行してしまっているので、いわゆるピットホール(落とし穴)について留意しておく事を、臨床獣医師は忘れてはなりません。
1) Michelle Ravich, et al; Lipid Panel Reference Intervals for Amazon Parrots (Amazona species), Journal of Avian Medicine and Surgery, 2014; 28(3):209-215.
(注 中性脂肪が高値であるという事は、VLDLが高値にある状態を指しており、糖尿病などが示唆される場合があります)

ところが、鳥類では“産卵”という特殊な生理が存在するので、一概にヒトの様な“不健康な”状態を想定しません。産卵中の雌ウズラの場合を、例に挙げます。
生化学検査によって得た各測定値から、non HDLを算出しました。
総コレステロール(TC)=178(mg/dL)
中性脂肪=740(mg/dL)←再検査済み, 乳びの出現はありませんでした。
HDL-C=59.1(mg/dL)
non HDL-C=178-59.1=118.9(mg/dL)
仮にF式を用いて計算したとすると、LDL-C値はマイナスになってしまい、意味を為しません。LipoTESTの波形パターンから、わずかですがLDLコレステロールが存在している事は、明らかです。
LDL-C = 178 - 59.1 - 740/5
= 118.9 - 148
= -29.1(mg/dL)
non HDL-Cの値が118.9(mg/dL)であるという事は、ヒトの場合だと目標値を満たしてはいるのですが、冠動脈疾患の既往がある場合のその数値とは< 130の事であり、際どい位置にある数値である場合も、あり得るのではないか(?)という懸念が生じます。
“答え合わせ”の為に、ヒトでは十分なサンプル量が得られやすいので、参考値として直接測定によりLDL-C値を知る事が出来ますが、鳥類ではサンプル量の制限からコレは難しいので、背景に自信が無い場合は、はじめからLipoTESTによって確認を行うのが無難です。
鳥類の産卵は、体内のLDLコレステロールを大量に体外に排出する生理現象なので、全体に総コレステロール値(TC)はそれ程でもなく、LDLコレステロール値は低値ですが、脂質の動員のためにVLDLに関する数値(TG)は、高値を示します。 non HDLの算出しか出来ない場合に、どういう状態の時にnon HDLの数値に対してLDL-C値が低値である事が考えられるか知っておけば、この数値によっても、おおよその動脈硬化症のリスクを知る事が出来る場合があると考えられますが、まだ情報が不足しているので、non HDLの数値のみによって状況を判断するのには、無理があります。
ただし、こうした数値の基準範囲について述べられているボウシインコ類の文献が、既に発表されております(1)。(僕の感想に過ぎませんが)まだ、こじつけや無理矢理感が目立ち、詳細な背景に関する、知見による肉付けが不足しているのが実体です。数値の提示が背景の整理よりも先行してしまっているので、いわゆるピットホール(落とし穴)について留意しておく事を、臨床獣医師は忘れてはなりません。
1) Michelle Ravich, et al; Lipid Panel Reference Intervals for Amazon Parrots (Amazona species), Journal of Avian Medicine and Surgery, 2014; 28(3):209-215.