用語解説 抱卵、孵卵、孵化。あるいはダブルミーニングという事について

 ダブルミーニングというのは、本来なら一つの言葉に2つの意味を持たせる事を言いますが、僕の言ってるダブルミーニングは、言葉の方で自発的に2つ以上の意味(日本語)に分離せざるを得ない言葉(英単語)という意味です。
 鳥類の繁殖関係の用語には、英文では一つの単語(章)であるのですが、日本語に訳すと、あたかもダブルミーニングの様に成ってしまい、同じ英語で書かれているその解説を、2つ以上の解釈に分けて訳さざるを得ない(書き直さざるを得ない)パートが現れます。
 
 
 原文(英語)では、“Incubation”と記してあれば、かなり広汎に渡って“Incubation”について述べる事が許されている訳ですが、この言葉は、日本語だと、孵卵、抱卵、孵化という、三者三様に理解される言葉に変換されます。すなわち、“卵を孵す”という行為の主体がトリにあれば“抱卵”、ヒトが人工的に行うのであれば“孵卵”、“孵卵”という過程は“孵化”とも解釈され、行為ではなく過程や手段を説明するのにも用いられます。日本語で、自然孵卵、自然抱卵、人工孵化、人工孵卵、自然孵化と訳されている言葉は、いずれも原文に“incubation”が使用されています。
 実際に英文を訳していくと、本来ならば“Incubation”について、何ページにも渡ってじっくりと説明していたはずの項は、上記の様な各項に分離してしまうので、場合によっては分かり難い文章に成ってしまう様です。

 鳥類の繁殖関係の用語は、行為の主体がトリ側かヒト側かで、一つの英単語が日本語に変換した際に分離してしまう訳ですが、同様の、ダブルミーニングによる訳文の分離は、“nest area”(巣のある場所/くつろぐ場所)、“vulture”(ハゲワシ類/コンドル類)、“infertile”((親鳥の)不妊/(- eggという表記で)無精卵)、“Insemination”(受精(精子と卵子が結合する事)/授精(精子と卵子を結合させる事))、“hen”(雌の家禽/同種の雌鳥)などという単語でも、見かけます。文意から適切な日本語に変換するしか方法が無いので、翻訳者の読解力が重要になってまいります。

 これらとは離れますが、英語で“common sense”は“常識”と訳します。
 日本語の常識は、“知っている知識”について述べている言葉ですが、英語の常識は、“経験から身に付いた思慮分別”を言います。つまり、「常識でしょ?」という言い回しは、“知っていて当然”ではなく、“当然、出来るよな?”ということを言っている事になります。例を挙げると、“全てのペアが異なる行動をとるので、各ペアにアプローチするのに慣れておく事や最善の繁殖管理を決めておく事は、常識です”という一文があった場合、簡単にこれ以上の日本語に変換する事は出来ないのですが、“これらの事を、当たり前の様に出来る様に成っておきなさい”という意味であると、解釈しなければなりません。
 英語とは、かくも難しいという話です。

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ま、いいじゃないか(^^;

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