用語解説 Ca:P:D3比

 Ca:P:D3比というのは、食餌中のカルシウム:リン:ビタミンD3量の事です。それぞれが重要なこの栄養素は、特定の一つについて論じるのではなく、この3者の相関関係、すなわち“比率(バランス)”によって説明されます。
 
 ビタミンD3が加わっていない、Ca:P比と呼ばれるモノは、目にした事があるかもしれません。これはすなわち、食餌中に含まれるカルシウムとリンのバランスは1.5~2:1が最適とされ(つまり、カルシウムの方が多く含まれている食餌が良い)、リン自体も骨の成長に必要となってくる成分なのですが、リンの量が多くカルシウムの少ない食餌は、消化管からのカルシウムの吸収を阻害してしまうので“カルシウム不足”になるという風に説明されています。
 この説明は分かり易いのですが、カルシウムの消化管からの吸収を調節しているのは、実は腎臓で代謝された最終産物である活性型ビタミンD3 です。この量が多い時と少ない時では、どれ程のカルシウムが食餌中に存在したとしてもほとんど吸収されなかったり、微量なカルシウムであってもナントカ上手くやっていく・・・という様に、結果が変わってしまいます。

 カルシウムの代謝は、非常に複雑な体内のメカニズムによって維持されており、簡単に説明する事は出来ません。数値化されたCa:P比というモノがある事から、Ca:P:D3比もソレになぞらえて、指標となるビタミンD3量が存在する印象を受けますが、実際には定められたビタミンD3添加量というモノは存在しません。非常に相対的で、時々の条件によって変化してしまうけれど、極めて重要な要素であるのというが、ビタミンD3の立ち位置です。
 飼料中に添加されるビタミンDには、D2およびD3があります。前者は植物に由来するビタミンDであり、後者は動物に由来します(主に魚油である事が多いようですが、割と何でも構いません)。これらは、摂取された後、体内で代謝を受けた後に活性型ビタミンD3と成って、消化管からのカルシウムの吸収を促します。ビタミンD3を、“ホルモン”と呼ぶ人達が居る様に、この活性型ビタミンD3による"命令“には、かなりの強制力があります。ビタミンD2およびビタミンD3のどちらを飼料に添加した方が良い(あるいはサプリメントとして補充する)という議論がありますが、どちらか一方を強力に支持するに足る根拠はありません。これらとは別に、医薬品として使用されるビタミンDの中には、活性型ビタミンD3に相当する成分が使用されている製品があり、より強力に生体に対して作用する事が予想されますが、前2者以上に中毒症状を誘発する危険性が高まりますので、いよいよ慎重に用いなければなりません。
 “ビタミンD”と呼ばれるモノは、皮膚→肝臓→腎臓の順に代謝を受け、最終的に活性型ビタミンD3に変換されて、生体内で利用されます。それぞれの部位で生じる代謝産物は全て“ビタミンD”と呼ぶ事が出来ますが、それぞれ異なる構造式を持った別々の物質です。
 皮膚に直射日光(紫外線、“健康線”とも呼ばれる特定の波長)が当たると、ビタミンDは化学的に合成され、肝臓に運ばれ代謝を受けます。肝機能が損なわれている場合、この代謝が阻害されます。同じく、肝臓で修飾を受けたビタミンDは、腎臓へ運ばれて活性型ビタミンD3となるのですが、腎臓に障害がある場合、この過程は阻害されます。経口で摂取する事の出来るビタミンD(多くのサプリメントの事。医薬品を除く)とは、この最終産物でないビタミンDという事になりますので、内臓疾患のある患者達では、かならずしも予定した効力を表さない事があります。異常が目立ちにくい事から、肝臓は“物言わぬ臓器”と呼ばれますが、その処理能力は一定以上の仕事をこなす事が出来ない様に成っているので、なんらかの薬物治療を受けている患者や肥満、ヒトならば飲酒などによっても、ビタミンD(あるいは、他のカルシウム代謝に関連するホルモンなど)の変換に割ける処理能力の低下が起きてしまい、慢性的にカルシウム代謝に影響が生じている事があります。

 Ca:P比を仮に2:1に設定したとしても、それは、リンの過剰から体を守る指標とは成るのですが、実際に飼料中に添加されるビタミンD3量や日光浴の程度、あるいは他の飼料やサプリメントからの補充状況によって、“最適な”Ca:P:D3比は大きく変動します。飼料組成中の含量がハッキリしている、ペレット食のトリ達であってすら、その結果は飼育条件によって一定せず、さらに鳥種によっても極端な変動(サプリメントの補充が危険である鳥種、カルシウムやサプリメント、日光浴を必要としている鳥種)がある事が知られています。
 ある一定の食餌中のビタミンD3に対して、カルシウムが多い場合(腎性骨異栄養症)、あるいは少ない場合(くる病)どちらでも異常が生じる事が、過去の実験から分かっております。しかしながら、実際には、定められたビタミンD3のみを摂取する飼育というのは、かなり珍しい飼い方になりますので(日光浴くらいする、他のモノも食べる)、個々のトリ達について、ある程度の臨床評価を行わないで、食餌内容やサプリメントの供与を決定する事は難しくなります

 文献上の情報もさることながら、与えられたニッチで安定した生活を送っている個体と(多くの文献にある様な)そうでない“患者およびその予備軍”を選別する方法は難しく専門的であり、性差による評価の違いを考慮しつつ、定期的な健康診断(採血)、詳細な飼育情報の提示(ならびに、過去あるいは現在の異常を識別するためのレントゲン撮影)無しに、こうしたトリ達に、安易にカルシウムやビタミンDのサプリメントを推奨する事や、その中止を勧める事は出来ません。(場合によっては有害となる)サプリメントを必要とする期間は、育雛期のほんの一時期のみで良い場合から、5年以上の長期間必要になる場合まで、非常に多様です。

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ま、いいじゃないか(^^;

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