用語解説 総排泄腔、総排泄口の手術。発生部位の相違

 そもそも、外科手術の際などの間違いを最小にするために、解剖学の用語は誤差の無い様に厳密に取り扱う事になっていて、その為に業界独特の言い回しさえ存在します。例えば、通常、世間では”繊維”と記載するものを、解剖学では”線維”と記載してみたり、口腔(こうこう)を口腔(こうくう)と読ませてみたり・・・正直、異論はありますが、間違えない様に簡単に書ける当用漢字を使う事、音が同じだと混乱する字句を、ハッキリと区別出来る状態で取り扱う事(手術中、いちいち辞書を読んで、書かれた文字を見て、確認が出来る訳ではないので)などに留意して、解剖学の用語は設定されて来ました。もちろん、ただの習慣もあります。

 こうした中にあって、微妙な扱いを受けてきたのが、総排泄腔(そうはいせつくう)と総排泄口(そうはいせつこう)です。どちらも、英語表記ではcloaca(クロアカ)と表記する事が出来ますが、正しく、日本語の字義通りに解釈するならば、総排泄腔が管腔状構造をした、糞、尿酸、卵などの通り道の事であり、総排泄口は、一つしかないそれらの開口部(排出口)という事になります。
 哺乳類では、おしりの穴の事を肛門(anal)と呼びますが、哺乳類以外ではvent(肛門)と記載します。つまり、鳥類を含めた両生類、爬虫類、魚類では、排泄と産卵に関する諸々は(間違いではないけれど、あまり、肛門とは言わない)総排泄口を通じて行いますので、cloaca(総排泄口)=vent(総排泄口)として扱われる場合があるという事になります。しかし、原文では、cloacaとventを区別して表記してある場合があるわけですね?

 以下に示したのは、総排泄腔とその周辺のトラブルに関する英文表記と日本語訳です。

cloacitis 総排泄腔炎(総排泄腔の炎症)
cloacal conditions 総排泄腔の疾病
organs prolapsed through the cloaca 総排泄腔脱(総排泄口からの臓器の脱出)
cloacal prolapse 総排泄腔脱
cloacal papilloma 総排泄腔の乳頭腫
cloacotomy 総排泄腔切開術(総排泄腔の手術)
vent stricture 総排泄口の狭窄(総排泄腔狭窄)
cloacolith 総排泄腔内の石(いわゆる膀胱結石などに相当する名称。ただし、尿酸塩に由来する結石とは限らないかもしれない)
cloacopexy 総排泄腔固定術←”固定”してなくても、総排泄腔脱の手術時には、こう訳される。伝統的に使用されてきた訳。
cloacoplasty 総排泄口形成術

 これらは、実際に書かれている術式等の内容から、同じ”cloaca”(あるいは”vent”)に関する記載が、開口部の問題なのか内腔の問題なのかを区別して、いちいち訳を変えていった、その名残です。
 爬虫類両生類および魚類では、総排泄口を総排泄と記載するので、鳥類でもその様に記載されている場合がありますが、鳥類臨床の分野では、少なくとも解剖学書の記載を確認した範囲では、総排泄口と記載するのが正しい様です。
 そもそもが、排泄物の出て来る部位を“口”とする事を嫌ったので“孔”という文字を使う事になったとされている話なので、世間一般では、どちらで記載されていたとしても間違いではありません。

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ま、いいじゃないか(^^;

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