用語解説(誤用の用例)

  
 最近では、あまり言う人も無くなってきたけれど、セキセイインコの換羽を”トヤ”と言う人達が居ました。このトヤとは、日本の鷹狩りの世界で使う言葉で、鳥屋、塒などと書いて”とや”と読ませます。実際の鷹の世界では、猟期が終わった鷹の足革を切って鷹部屋に放し飼いにしておく事を、”塒入り”と言ったので、ソレは体重を増やして、次の猟期までに傷んだ羽根を新しい羽根に生え替わらす換羽を促す行為でもあった事から、転じてトヤ=換羽と成ったらしい。巷間によく使われていた、誤用です。年がら年中、羽毛が生え替わっていてもおかしくないセキセイインコに使う様に成ってしまうと、本来の使用方法との間にニュアンスの違いが生じます。
 類似の誤用に、”シシアテ”というのがありました。これは、胸の筋肉の付き具合を”肉色(しし)”という事から始まった誤用で、本来、”肉色の具合をみる”、”肉色当ての具合がよろしい”などという使い方をしていたハズが、胸筋量を確認する行為を指して”シシを当てる”、”シシアテ”という用法に転じて一人歩きをして広まった結果、単に胸筋の触診の事を指す言葉として通用するように成ってしまったという言葉です。元々、この肉色を使って六分とか八分という事を言った事から、そういう話に成ったのですが、六分=60%の栄養状態という意味ではありません。別の基準で”六分”という事を言っていたのです。やはり、これらを鳥類診療全般でその様に使おうとする獣医師が時折出てしまい、混乱の原因に成っています。あくまで、触診を行った上で、BCSとしてそちらを評価しなければ、おかしな具合に成りますし、ソレは触診なのであってシシアテではありませんし、おそらくソレは誤用です。

 以上2つは、鷹の世界の言葉を他の鳥種に用いようとして、意味の変質と混乱が生じてしまっている事例です。こうした話は、他にもあります。混乱の理由は、それぞれ、各分野での用語が、よくまとまっているので、その鳥種以外に外挿して説明しようとしたら、妙な具合に成ってしまった言葉の数々です。あくまでその分野で使用している限り問題無いのですが、異なる鳥種(分野)にもその用語を用いようとして、殆どは外国文献の翻訳が原因に成るのですが、混乱が生じます。
 鷹狩りの用語以外で、こうした話題に当たるのが、ニワトリ(家禽全般)と水鳥(羽毛布団の用語?)、野鳥(鳥類学)の用語の使用です。最近では、影響を受けつつもそれぞれ独自の発達を遂げている分野ですから、猛禽類とインコ・オウム類の間にも、独自の用語が目立つ様に成ってまいりました。
 不用意に、他の分野の用語の外挿を行う前に、そういう外挿は行っても良いモノかどうか、少なくとも、原文以上の外挿に成ってはいないか、立ち止まってみる慎重さは必要なのではないかと思います。
 
 先日紹介した”ペローシス”などもそうですが、最近の英語文献で、そういう病名は簡単には見つからず、本来の家禽疾病の分野でその名を残すのみ。僕の様な若輩者には、その病名が本邦のセキセイインコなどに使われ出した当時、海外文献の記載がどうであったかなど知るよしもありませんが、こういった(誤用に関連した)情報は修正をしておかないと、ガラパゴス化した日本の獣医療だけでは、圧倒的症例数を誇る、その背景から生み出された海外の獣医療情報を消化する事が出来なくなります。
 たとえば、英国で飼養されている猛禽の総数は約4万羽ほどとされていました。どう考えても、本邦の飼養羽数はその足元にも及びませんし、獣医師の経験の程度もソレに比例します。こうした、症例豊富な土地の獣医師達の報告を読まずして、正常な獣医療の提供はあり得ません。
 原文の中で、参考文献は多数現れますが、それらは、特にインコ・オウム類、猛禽類、鳥類学からの外挿によって構成されている事が多く、家禽系の情報は少ないか殆どありません。少なくとも、翻訳者の人達も、それくらいの留意は必要でしょうし、読み手側にも、それくらいの”常識”が無いと、誤解が生じやすい事は、覚えておいた方が良いかもしれません。つまり、”その分野で使用される言葉とは、どうあるべきなのか?”という事を整理しておけという事です。
 このテーマが自分の中に出来ていないと、情報に流されて、自分を見失ってしまいます。セキセイインコにニワトリの病名を付ける事もそうだし、セキセイインコは鷹狩りに使う鷹じゃないし、どんなにしつけてもその様にはナランという事です。

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お久しぶりです

トヤ、ししあて
猛禽飼う時にショップで、そう教えて貰いました(^_^;)

でも実際は胸の肉付き具合は素人が触った所であまり分かりません…

ただ幸いにもウチの三羽は元気でございます(^w^)
また何かあった際は宜しくお願いします
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わたらい先生

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ま、いいじゃないか(^^;

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