用語解説 Conformation Dysmorphisms

 これは、主に猛禽類の、それもハンドレアードに関する情報です。鳥種を飛び越えて同様の話題は存在しますし、似た様な結論に至るケースはあると思いますが、根拠となる文献を今提示する事は出来ません。表題にあるのは、特定の遺伝上の問題や特定の栄養欠乏によるトラブルを含んでいますが、そういう情報については、既に既出の特にインコ・オウム類に関する情報を調べていただければ、詳しい情報は得られるし、むしろ巷間に”常識”として流布している情報が、それらです。
 ここで述べようとしてるのは、その追加情報です。
アフリカオオコノハズク

 写真は、アフリカオオコノハズクの全身像です。
 こうした骨格の変型(Conformation Dysmorphisms)の原因と考えられる問題には、既出の情報だけでかなりの量があり、殆ど特定される事はありません。ただし、最近の文献の中に、以前には存在しなかった、それらしい説得力を感じる記載が見つかる様になったので、紹介しておきます。

 ハンドレアードのヒナというのは、ペアレントレアードのヒナ達の成育に比べて、ある時期、早い成育段階において、より体格が大きく、より早い行動発達(立ち上がる、その辺を歩き回る)を示している事があります。この事は、”ハンドレアードのトリ達の方が、早くに大きくなる”と言えなくはないのですが、実際には、”正常な”同日齢の同種のペアレントレアードのヒナに比べて、より体重が重く、過剰な負荷を骨格に与えながら成長して行くと考える事が出来ます。骨格の変形は、こうした時期に発生しやすい、潜在的な(外観からは見つかりにくい)構造異常です。
 ハンドレアードという育成方法は、ヒトにとって都合の良い行動発達上の”エラー”(例、ヒトへの馴化、性的刷り込み、インコ・オウム類のものまねなど)を生じさせる役に立っているのですが、メリットだけではなく、”問題行動”として認知される行動異常の数々をも発達させます。その一部には、健康上の問題が含まれます。当然、利点(ペアレントレアードのトリ達よりも、強い免疫状態を維持したまま訓練できるという様な)も存在するので、とにもかくにも、この育成方法の有利と不利については、周知されているべきです(獣医師に)。

 まあ、最近読んでる”文献の旅”には、こんな寄り道が含まれていたのですね。
 こうした問題を治療(予防)するために、従来のテキストではカルシウムの供給と日照に関する話題が、かろうじて提供されていて、実際の臨床では総合ビタミン剤の供与が行われていた一方で、ビタミンDの供給については毒性の発揮が懸念される事から、否定的にも扱われて来ました。
 情報は更新され、Ca:P:vit.D3比というものが紹介されていました。ビタミンはD2ではなくてD3です。実際には、ガラスなどにより遮蔽されていない日光を1日○分以上浴びているトリには必要無いなど、かなり具体的です。これは、目的としては、早くに歩き始めるハンドレアードのヒナ達の骨を、曲がったりしない様に、早くから固めてしまおうという事を言っています。治療ではなくて、あくまで予防です。当然、代謝性骨疾患(MBD)と呼べるレベルまで状況が悪化している患者には、治療目的で使用されます。
 ハンドレアードのトリ達にこういう問題が多いのは、その時期だけを比べれば、正常な育雛が行われているペアレントレアードのヒナ達よりも、より体重が重く、より活発な活動を行っているからです。しかし、言い換えれば、ペアレントレアードのヒナ達の中にも、こうした問題を潜在的に持っている個体は、発生しています。”正常”よりも、早くに大きくなってしまい、早くに活動を始めた個体が居ればいいし、あるいは、その骨格で支えきれる以上の体重をしていたり、それ以上の行動をしてしまった個体が居たら、全てそうなる可能性があるという事です。
 これらは、事実上、単なる若木骨折に相当するもので、必ずしも代謝性骨疾患(MBD)とは呼びません。ただし、”潜在的な、不顕性に経過しているMBD”である可能性を残しておく事が出来るので、こうしたトリ達の中で、購入後数年で死亡してしまう個体が現れる事も、説明出来てしまいます(いずれにせよ、異常を発見した場合は、”処置”を行う)。
 本邦では、特にハンドレアードのフクロウ類にこうした問題を持っているトリ達が多く現れますが、ペアレントレアードの他の種類の猛禽であっても、時折なら、こういう問題を持ったトリを見つける事がある原因もまた、こういう事を知っていたら、説得力のある説明を行う事が出来ます。
 脚に異常を生じたトリは、翼で這う様に移動する時期があります。その様な状態では、体重のかかった他の部位の変型が生じてしまっても、やむを得ないと言えます。もしも、脚だけでなく、翼や全身の骨格に変型が現れたトリが居たとしても、何も栄養上の問題だけで説明する必要はありません。そういう育成過程選択した場合、そのルートではやむを得ず発生してしまう”エラー”があるという事です。ただし、ハンドレアードのトリ達には、そういう欠点を補って余りある”ヒトへの慣れやすさ”がありますから、むしろ、こうした育成過程を経た鳥を買う人達は、こういうモノが混じっている事を、承知で買うべきだろうという事に成るようです。
 僕的には、よく分かる話でした。

 ペアレントレアードのトリ達であっても、こうした問題を発生しやすい鳥種が数種と、与えられている餌の傾向(例、ハリスホークでは、餌がウサギやハトである事が多かったなど)が紹介されていました。具体的で、興味深い内容です。
 このハリスホークの話には、おそらくヨウムで言われている事と類似した情報の外挿が行われていました。ヨウム(African grey Parrot)というトリは、アフリカ原産の、赤道直下の地域に住む、強い日照条件下で生息している事が知られているトリです。この鳥の雛を育成する際には、通常のインコ・オウム類の育成条件に加えて、カルシウムやUVB(紫外線の一種)(あるいは活性型ビタミンD)の供給を行う事が必須条件とされています。ハリスホークの原産地域も、強い日照の存在するはずですから、そういう事が記載される様になって来ているのですね。ある程度育ってしまったトリ達には、それ程重要ではない話でもあるので、ヒナの育雛期において、こういう条件を満たすべきであるという事のようです。

参考文献
・『猛禽類、ハト、水鳥マニュアル』(学窓社)
この本(↑)の監修者の一人である、N.A.Forbesという先生の著作物は、御自身の病院ホームページから閲覧出来るモノが数点ありまして、ソースはそのいくつかです。2011年以降に書かれた(おそらく飼い主向けの)資料であるようです。どこかの雑誌に出したモノが含まれている様なのですが、その辺の情報が不明なので、タイトルのみ記載しておきます。
・Forbes NA, Health and Behavior Risks and Benefits Associated with Rearing Imprint Raptors
・Forbes NA, RAPTOR NUTRITION
・Forbes NA, RAPTOR NUTRITION: WHAT WE FEED THEM, WHAT GOES WRONG, HOW WE DEAL WITH IT.

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ま、いいじゃないか(^^;

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