猛禽類のウイルス感染症

 ここに挙げる各種の感染症は、一般の猛禽類の飼育者がおそらく遭遇する事のない病気であり、獣医師自身も(診療をする機会が無いので)正しく診断が出来るとは限らない病気の群れです。ただし、過去に本邦で発表された著述の中には(おそらくは誤訳によって)、誤解されている不正確な情報も多かったので(1,2)、その情報の修正と猛禽類の感染症の予備知識を提供する目的で、(猛禽類の)感染症について調べようとした時に遭遇するかもしれないいくつかの有名な伝染病について(3)、簡単な解説を行います。
 

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副鼻腔炎

 副鼻腔炎は、“くしゃみをするトリ”や“鼻水のトリ”に対して使う事の多い名称です。ただし、“副鼻腔炎”は病名ではなく症状名なので、元となった病気の症状の一つとして、この異常は捉えられていなければなりません。

鼻出血
(図1.ボウシインコの鼻出血。この患者は、副鼻腔炎によって頻繁に自身の鼻の周囲を気にしていた)

 

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毛引き症

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“嗉嚢(そのう)の病気”

 おそらく全国的に、かつて一世を風靡した検査とその診断名に“嗉嚢(そのう)検査”と“嗉嚢(そのう)炎”というのがありました。嗉嚢(そのう)の検査自体は現在も行われておりますが、“嗉嚢(そのう)炎”という症状名あるいは疾病名については現在では使わなくなってきておりますので、その背景について説明いたします。

ラセン菌
(図1.嗉嚢(そのう)内容物中に見つかったラセン菌。Campylobacter spp.感染症を疑う症例)

 

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総排泄腔脱 (総排泄口から脱出している諸臓器)

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関節通風

 痛風には、尿酸結晶が内臓に沈着する内臓痛風と、関節に沈着する関節通風があります。パラキート(セキセイインコやオキナインコなど)やオカメインコでは、関節痛風が破行のよくある原因の1つになります。

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(図1.オカメインコの関節通風)

 

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Splay leg

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肝リピドーシス(脂肪肝)

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アテローム性動脈硬化症

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多発性骨化過剰症

 繁殖期の雌鳥に見つかる生理的な変化に、骨髄骨があります。この骨組織は、卵殻形成時のカルシウム調整に関わる事が古くから知られています。この変化は、主に大腿骨と脛足根骨に現れます。
 一方で、産卵をしていない雌や、雄のセキセイインコにも、多くは上腕骨や大腿骨に、生理的な骨髄の骨化に似た現象が生じます。これを多発性骨化過剰症と呼びます。この名称は、正しくは病名ではなく症状名になります。

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(図1.雄のセキセイインコの精巣腫瘍で見つかった多発性骨化過剰症。精巣腫瘍では、腫瘍の成長に連れてアンドロゲンの産生が減少するので、エストロゲンが優位になる。患者のろう膜には雌性化の徴候が認められ、レントゲン撮影を行うと、本来なら雌鳥にしか見つからないはずの骨髄骨が認められる様に成る)

 

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低カルシウム血症

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マクロラブダス症

 マクロラブダス症は、以前の名称をメガバクテリア症、あるいはAGY症(avian gastric yeast)と言いましたが、現在では細菌性疾患ではなく、酵母のMacrorhabdus ornithogaster(以下マクロラブダス)による前胃ないし筋胃の疾患(proventricular disease;PVD)である事が分かっています。
 

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前胃拡張症(PDD)

 前胃拡張症(Proventricular Dilatation Disease (PDD))は、1977年に初めて診断された、非常に複雑な疾病です。本症は、コンゴウインコ類の消耗性症候群(macaw wasting syndrome)、インコ・オウム類の消耗性症候群(psittacine wasting syndrome)、インコ・オウム類の前胃拡張症(psittacine proventricular dilatation disease(PPDD))、腸管筋神経節神経炎(myenteric ganglioneuritis)、前胃肥大(proventricular hypertrophy)、浸潤性内臓神経障害(infiltrative splanchnic neuropathy)、リンパ形質細胞性脳脊髄炎(lymphoplasmacytic and encephalomyelitis)としても知られていました(1)。

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中毒(重金属中毒)

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食餌の評価

 トリ達の食べる食物には、飼い主の皆様それぞれの“こだわり”があってしかるべき話題なので、むしろここで述べるのは、成書にある猛禽類が口にするであろう食餌に対する評価の紹介です(1,2)。その為、本邦の流通の事情とは一部異なる点がある事を、あらかじめご了承ください。

 猛禽類に与えるべき栄養素に関する元々の考えというのは、“正常で状態の良い野生個体が自然界から得ている栄養に近似させる”というものでした。この考え方は、おおよそ1980年代の頃にはあった様で、各鳥種に必要な栄養素の背景が全く分かっていなかった時代に、“野生のトリ達と同じやってみよう”という事を言っていたにすぎません。
 現在の栄養学上の考えは、飼育下の猛禽類は“野生と同じ食餌”にこだわるのではなく、私達が容易に入手出来るひよこやウズラなどを与える事によって得られた、科学的・経験的な知見に基づいて、その猛禽類のライフステージにとって“必要な栄養素を確保する”という方向に軸足を移しております。

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(図1.キジ刺し。猛禽類にとって、この内容では必要な栄養素が完全には満たされない。おそらく、これだけを与えていた場合、そのトリの寿命は数年で終わるだろう)

 

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安全性に関する提言

 私達の身の回りにある“ヒトに安全な”品々(しなじな)は、鳥類にとっての安全性が保証されている訳ではありません。また、一度くらいの摂取や暴露が無害だったからといっても、その後何ら有害事象が発生しない事を保証している訳ではありません。

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(図1.網猟で捕獲した国産のスズメ。例えば、京都の伏見稲荷では“すずめの焼き鳥”が門前名物として有名である。この食文化は日本中に存在するが、その消費量を国内で捕獲したスズメだけではまかない切れなかったので、国内とは捕獲方法が異なる、外国から食肉として輸入したスズメが提供された。当時(2004年以前)は、業務用スーパーなどでもこの製品は入手出来たが、与えられた猛禽類に中毒症状が現れた事があった。写真のスズメたちは網猟で捕獲しているので、汚染の心配はない)

 

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バンブルフット(趾瘤症)

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頭部外傷

 分かり易い頭部外傷とは、飼い主の眼前で使役していた鷹が建物などに衝突したという稟告(りんこく)が聴取された時を言うのですが、非常に残念な事に、その様なトリ達は例外無く即死してもおかしくない速度で衝突してしまっているので、診療の対象となる事は稀です。

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(図1.ガードレールとの接触事故により目の周囲が腫脹したオオタカ(左、中央)。この目の腫れは、治療により翌日には消失した(右)。事故直後は意識が無く、その後蘇生した珍しい症例である)

 

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目の異常

 猛禽類で遭遇する眼の異常は、外傷によるものが最多です(1,2)。眼球は、大きく前眼部と後眼部に分ける事が出来ますが、ヒトが肉眼で観察出来るのは前眼部のみであり、後眼部の異常を見つけるには専用の検査機器が必要です(眼底検査、眼圧検査など)

塗料
(図1.このハリスホークは、衝突によって角膜表面に塗料が付着している)

 

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毛引き症

 毛引き症には、トリ達が自ら羽毛を引き抜こうとする行為だけではなく、羽毛や皮膚の異常を気にして(羽毛や自身の体を)かじろうとしたり自傷行為に及ぶ場合が含まれます。
 猛禽類の毛引き症は主としてハリスホークに認められ、ある報告では全体の患者の81%がこの鳥種によって占められていました(1)。

 (猛禽類の)毛引き症には、知能の高いトリ達に見られる行動上の問題(“退屈による問題行動”)である場合と、他の疾病や外傷等の異常によって発生している“症状”である場合があります。

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(図1.毛引き症のハリスホーク。左;両親と兄弟から離され、訓練の為に繋留される様になった頃から毛引き症が始まった。両腿には羽毛が無い。右;半年後、実猟を経験し、“ひとりで”遊ぶ事を覚えた頃から、羽毛が戻る様に成った)

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爪傷ないし咬傷

 英語で、特に鷹同士のケンカの事を“Crabbing”と言います(1)。この英単語は一般に“カニ漁”、つまり、モリで突いた傷の事を表しているので、鉤爪による爪傷の俗称が転じた表現であった事が分かります。

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(図1.猛禽同士のケンカ傷は目立たず、トリ達もヒトの見ていない所でしか異常を表していないかもしれない)

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嘴の損傷

 嘴は、一個のカルシウムのカタマリなどではなく、血の通った構造をしています。嘴の表面を構成している角質層(ケラチン)は、骨との間にある真皮から成長したシート状の構造物です(1)。真皮には血管も神経も存在するので、嘴を負傷したトリ達の中には出血が認められる事があり(図1)、痛みや細菌の汚染に悩むトリ達が現れます(図2)。

ミンク咬傷
(図1.ミンクの咬傷により上嘴から出血しているハリスホーク。細菌による汚染を防ぐ為に、抗生物質による治療が必要である)

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脚部の骨折

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翼の骨折

 “翼の骨折”とは、翼を構成する主要な骨である上腕骨と、橈骨ならびに尺骨の骨折をいいます。
 飼育されている猛禽類ではこれらの部位の骨折に遭遇する事は稀なので、ここで紹介する症例は全て野生の猛禽類になります。

チュウヒ
(図1.畑の中で見つかったチュウヒ。強い風の吹いた日の翌朝には、野生の猛禽類が“落ちて”いる事がある)

 

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烏口骨の骨折

 烏口骨は、前肢帯を構成する3つの骨の内の一つであり、哺乳類では見られない鳥類独自の骨です。

ハヤブサ
(図1.烏口骨骨折の見つかったハヤブサ。右翼の下垂と触診による烏口骨のある部位でのクリック音が明らかである)

 

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翼の軟部組織の障害と脱臼

 特に野鳥が、翼に骨折の見つかる状態で保護収容された場合、その骨折はおそらくその部位に強力なエネルギーが加わって生じたものであるはずなので、そのエネルギーは(100%骨折を起こした部位で吸収されて、その骨のみを折ったのではなく)同時に周辺の筋肉や腱、靱帯といった軟部組織にも拡散し、吸収されています。

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(図1.橈骨に骨折の見つかったオオタカのレントゲン像。レントゲン写真からは、橈骨の骨折のみが異常であるかの様に見える)

 

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鉤爪の欠損

 ハリスホークやオオタカでは珍しい事ではありませんが、獲物やグローブをしっかりとつかんでいたトリ達の第1趾あるいは第2趾の爪が、とれてしまう事があります。

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(図1.このオオタカは、自らグローブを強く握りしめていたので、飛翔訓練中に飼育者の投擲行為にともない第1趾の爪が抜けてしまった)

 

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趾部の切断

 野生の猛禽類や鷹狩りに使用されているトリ達にとって、足の指の切断は“最後の手段”なので、術後、その個体が生活していく可能性が高い時にのみ実施し、それ以外のケースでは安楽死が推奨されます。

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趾骨の骨折

 趾骨とは、足の指の骨の事です。

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(図1.趾骨骨折の例。外観が一見したところ正常に見えたとしても、骨が無事であるとは限らない)

 

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手根中手骨の骨折

 成書にある手根中手骨の骨折とは、主に野鳥で遭遇するタイプの骨折であり、“難しい骨折”、つまり治療成績の良くない骨折の一つであるとされています(1)。

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(図1.ノスリの手根中手骨の骨折。野鳥におけるこの部位の骨折は、建物への衝突などの強力なエネルギーが加わった結果による事が多いので、骨のみならず周辺の組織が強い損傷を受けている事が多い。“強い損傷”とはすなわち、開放骨折(複雑骨折)の事である。症例は、大中手骨の粉砕骨折(骨折部が複雑に粉砕した骨折のこと。いわゆる複雑骨折は、骨折端が皮膚を突き破り空気に触れている骨折を言う)と、小中手骨の単純骨折に加え、手根関節の(おそらく)関節内骨折を起こしている)

 

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卵塞

 猛禽類はあまり卵を産まない鳥種なので、産卵に関連するトラブルに遭遇する事は稀です。

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(図1.猛禽類は、体格に対して過大に見える卵であっても産卵出来る事の多い鳥種である。ただし、肥満鳥や、カルシウムやビタミンDの摂取状況に不備のあるトリ達では、難産になる事がある。このハリスホークには、十分なカルシウムの動員が起きている証拠である骨髄骨が観察されないので、低カルシウム状態による難産が起きていると考えられる)

 

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Wing Tip(翼端浮腫)

 この疾病は、正式な名称を“Wing tip oedema and dry gangrene syndrome(翼の先端(翼端)に生じる浮腫と乾性壊疽の症候群)”と言います。おそらく同一の英名の邦訳と考えられる呼称には、“翼先端の浮腫および乾壊痕症候群(1)”、“浮腫および乾性壊疽症候群(2)”があります。“dry gangrene(乾性壊疽)”という表現は近頃では使わないので、最近の文献では“Wingtip oedema and necrosis syndrome(WTONS)(翼端に生じる浮腫と壊死の症候群)”という病名が使われています(3)。
 いずれにせよ、こういった長い病名は使い難いので、一般的な呼称としては“Wing tip oedema(翼端浮腫)”が、よく用いられている様です(4)。ただし、日本人には“oedema(浮腫)”という英語自体馴染みが無く、何を言われているのか分からなくて普通なので、当院ではこれを更に短くして“Wing Tip(翼端浮腫)”と呼んでいます。読みは“ウイングチップ”、“よくたんふしゅ”です。本邦の猛禽類飼育者の中には、この疾病を“手羽腐れ”、“手羽落ち”と呼ぶ人達がいます。

翼端浮腫の初期病変
(図1.翼端浮腫の初期病変(*)。特徴的な腫脹と水疱の形成が認められる。この腫脹は、指を押しつけるとその形のくぼみが数分残ることから“圧痕浮腫”と呼ばれる)

 

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骨の変形

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ビタミンD3過剰症(内臓痛風)

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わたらい先生

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ま、いいじゃないか(^^;

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